artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

5.7原発やめろデモ!!!!!!! 渋谷・超巨大サウンドデモ

会期:2011/05/07

渋谷一帯[東京都]

2011年4月10日の高円寺に引き続き、素人の乱が中心になって組織した「原発やめろデモ」の第二弾。小雨が降りしきるなか、高円寺と同じ15,000人あまりが参加した。警察によって細分化された結果、高円寺ほどの群集を体感することはできなかったにせよ、それでもサウンドカーが何台も投入され、渋谷の街を大音響で染め上げた迫力は凄まじかった。デモというと、いまだに特殊な人びとが行う迷惑行為という印象が根強いが、今回のデモはふつうの若者が集まる街を歩いたせいか、そうしたステレオタイプを見事に一新したように思う。車道を歩く人びとと歩道から眺める人びとのあいだを区別する境界はほとんど感じられなかった。同じ空気を吸って生きているのだから当たり前といえば当たり前の話だが、デモという集団的な表現形式が社会に定着しつつあることの意義は少なくない。途中からデモに加わってもよいし、ある程度音楽に満足したら別のサウンドカーに移動すればよい。言ってみれば、ステージも客も移動する野外フェスのようなものだ。しかも費用は、被災地への義援金と、デモを組織するために必要な資金へのカンパだけ。これを黙って見過ごすのは、あまりにももったいない。放射能の恐怖に素直に怯えつつ、しかし同時にその中で楽しむ術を共有してこそ、まさしく同時代のアートといえるのではないか。

2011/05/07(土)(福住廉)

《豊島美術館》

会期:2010/10/17

豊島美術館[香川県]

美術家・内藤礼と建築家・西沢立衛による美術館。直島の地中美術館や犬島の精錬所と同じように、建築と美術を一体化させたコミッション・ワークを見せる美術館だ。天井の低いシェル状の外観は周囲の棚田の風景と見事に調和し、内側に設えられた内藤礼による水滴の作品とも絶妙な相似形を描いていたことから、美術と建築が有機的に結合していたことはたしかである。ただし、この美術館の核心は都市型の美術館ではなしえない独自の機能にある。それは、来場者に作品を鑑賞させるというより、自然を体感させることだ。来場者は大きく開けられた2つの開口部から差し込む光と風の匂い、その先に広がる空の色、木々のさざめき、そして靴を脱いだ足の裏に冷気を感じ取る。つまり美術館で作品を鑑賞するようでいて、その実、美術館をとおしてそれを取り囲む自然環境を感じているのだ。一体化しているのは美術と建築だけでなく、双方を包み込む自然でもあるわけだ。これが豊かな自然を資源とする美術館ならではの特徴であることはまちがいない。ただし、電力を用いることなく、風雨に晒されるがままを見せるこの美術館は、脱原発の方向に進路を切り換えつつある現代社会の未来像を、期せずして先取りしているともいえるのではないだろうか。

2011/04/29(金)(福住廉)

『イヴ・サンローラン』

会期:2011/04/23

ヒューマントラストシネマ有楽町[東京都]

2008年に亡くなったイヴ・サンローランのドキュメンタリー映画。公私共にパートナーだったピエール・ベルジュによる回想をとおしてイヴ・サンローランのクリエイションの真髄に迫る。私邸を彩る数多くの美術品に瞠目させられたことはたしかだが、しかしデザイナーとしてのイヴ・サンローランを孤絶感に集約する演出はいかにも凡庸で、耽美的な音楽も単調極まりない。ファッションやアートにかぎらず、あるいは非言語表現や言語表現にかぎらず、何かのものを創り出すクリエイションとは、本来的に孤独であることは誰もがすでに体験的に知っているのだから、それをいまさら強調されても困ってしまう。それゆえ、映画をとおして浮き彫りになるのは、イヴ・サンローランへ注がれたピエール・ベルジュの愛だけであり、あまりにも一方的な愛の告白が映画の全編にわたって満ち溢れていることを思うと、これはむしろピエール・ベルジュのドキュメンタリー映画というべきかもしれない。

2011/04/27(水)(福住廉)

コレクション展 1960-2000年代のファッション サンローランからガリアーノ、マックイーンまで

会期:2011/04/21~2011/06/28

神戸ファッション美術館[兵庫県]

1960年代から2000年代の代表的なファッションを、約30人のデザイナーによる約50点の作品で展観した。作品はレプリカではなく、すべて実物である。今までの同館の展示は服飾史をたどるように構成されていたが、現代の、それもつい10年ほど前の服をこれだけ大量に所蔵しているとは知らなかった。昨年10月に大規模なファッション写真のコレクション展を行なった時も思ったのだが、神戸ファッション美術館はまだまだポテンシャルを出し切っていない。日本中探してもここだけにしかないお宝を沢山持っているのだから、今後は出し惜しみせず、どんどん活用してほしい。

2011/04/21(木)(小吹隆文)

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東日本大震災における建築家による復興支援ネットワーク「アーキエイド」

ArchiAid[アーキエイド]

東日本大震災を契機に、その復興をサポートするための国際的な建築家のネットワークが立ち上がった。アーキエイドがめざすのは、緊急避難→仮設住宅→まちづくりという一連のプロセスにおけるとくに第三段階において、リサーチや提案などを通じ、建築家のスキルを生かすこと、被災した東北エリアの教育環境を支援すること、関連するリサーチや活動のアーカイブをつくること、そしてこれらの目的のために使える寄付金を集めることである。まだホームページが開設されたばかりで、始まったばかりの運動体だが、長く継続していくことが重要だろう。

2011/04/11(月)(五十嵐太郎)