2019年07月15日号
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artscapeレビュー

《豊島美術館》

2011年06月01日号

会期:2010/10/17

豊島美術館[香川県]

美術家・内藤礼と建築家・西沢立衛による美術館。直島の地中美術館や犬島の精錬所と同じように、建築と美術を一体化させたコミッション・ワークを見せる美術館だ。天井の低いシェル状の外観は周囲の棚田の風景と見事に調和し、内側に設えられた内藤礼による水滴の作品とも絶妙な相似形を描いていたことから、美術と建築が有機的に結合していたことはたしかである。ただし、この美術館の核心は都市型の美術館ではなしえない独自の機能にある。それは、来場者に作品を鑑賞させるというより、自然を体感させることだ。来場者は大きく開けられた2つの開口部から差し込む光と風の匂い、その先に広がる空の色、木々のさざめき、そして靴を脱いだ足の裏に冷気を感じ取る。つまり美術館で作品を鑑賞するようでいて、その実、美術館をとおしてそれを取り囲む自然環境を感じているのだ。一体化しているのは美術と建築だけでなく、双方を包み込む自然でもあるわけだ。これが豊かな自然を資源とする美術館ならではの特徴であることはまちがいない。ただし、電力を用いることなく、風雨に晒されるがままを見せるこの美術館は、脱原発の方向に進路を切り換えつつある現代社会の未来像を、期せずして先取りしているともいえるのではないだろうか。

2011/04/29(金)(福住廉)

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