artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

太宰治資料展 Ⅱ

会期:2016/06/11~2016/07/03

三鷹市美術ギャラリー[東京都]

太宰治には高校生のとき人並み以上にかぶれた。以来40年以上読み返したこともないけど、チラシに載ってる太宰の描いた絵を見て久しぶりに触れてみようと思った。展覧会は昨年に続くもので、太宰の妻子が慈しんだ津島家寄託資料を中心に、直筆原稿や初版本など約70点を展示。肝腎の絵は7点あり、風景画は黒田清輝の寂寥たる絶筆《梅林》によく似ている。驚いたのは自画像で、私事になるけれど、ぼくが高校生のときに構想した太宰の肖像画とそっくりなのだ。といっても構想だけで終わったけど、絵柄はいまだによく覚えている。それは太宰の斜め横顔を大きな筆遣いでざっくり描くというもの。背景の色とサイズは違ったが、イメージはそっくりそのままだった。この自画像は以前も以後も見た記憶がないので、偶然の一致なのか、それともそれが太宰の定番イメージなのか。

2016/06/24(金)(村田真)

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土木展

会期:2016/06/24~2016/09/25

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

21_21にて、「土木展」のオープニングに顔を出す。過去に前例がない企画なので、てっきりカッコいい、土木デザインの事例を紹介する作品主義だと思い込んでいたが、いい意味で裏切られた。これは楽しいドボクの展覧会だった。インタラクティブなインスタレーションなどを通じて、土木の世界を知る仕掛けの数々。また会場に置かれていた土木系カルチャーを扱う『ブルーズ・マガジン』も衝撃である。

2016/06/23(木)(五十嵐太郎)

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古代ギリシャ─時空を超えた旅─

会期:2016/06/21~2016/09/19

東京国立博物館[東京都]

史上最初にして最強の美を生み出した古代ギリシャの展覧会。なのにミロのヴィーナスもなければ、サモトラケのニケもない。もちろんパルテノン神殿を飾っていた大理石彫刻群も来てない。それらはみーんな列強が持っていってしまった。だから今回はギリシャ国内の美術館・博物館が所蔵する、残りものには福がある展覧会なのだ。構成は「古代ギリシャ世界のはじまり」から、「幾何学様式~アルカイック時代」「クラシック時代」「古代オリンピック」、そして「ヘレニズムとローマ」までの8章立て。初めのほうは壷や装身具のような小物や、ヘンリー・ムーアみたいな人物像が多くていささか退屈だが、やがてフレスコ画やモザイク画が現れ、壷絵もより精巧になり、華やかな金細工も増え、人物像も徐々にリアルになってくる。「古代オリンピック」に1章が割かれているのは、なぜいま東京で「古代ギリシャ」展が開かれるのかの答えになっている。つまり今年がオリンピックイヤーだからであり、東京が次の開催都市であるからだ。

2016/06/20(月)(村田真)

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野口直人 ミケランジェロ展をめぐるレクチャー

会期:2016/06/16

横浜国立大学[神奈川県]

二次元の図面では十分に表象しえない、おそらく立体的な彫刻として構想されたラウレンツィアーナ図書館の階段室をCNCルーターを駆使し、模型を製作した。古典主義からSANAA、ゲーリーにも議論が及び、建築家と歴史家が共通に語れる貴重な場だった。また会場の壁に向かって、1/1のスケールでCGの透視図を投影し、巨大なサイズであることも確認した。

2016/06/16(木)(五十嵐太郎)

あわれ彼女は娼婦

会期:2016/06/08~2016/06/26

新国立劇場 中劇場[東京都]

栗山民也の演出による17世紀の戯曲「あわれ彼女は娼婦」@新国立劇場。アナベラ(蒼井優)と兄(浦井健治)の近親相姦がもたらす悲劇と狂気の作品である。脇役それぞれの愛憎の物語も、これに絡んでいく。壊れた額縁の向こうの舞台の床に、傾いた巨大な赤い十字架がセットとして設えられ、それが全場面を通じて効果的に用いられる。シンプルだが、シンボリックな舞台美術。これは上階の席の方がよく見えるかもしれない。

2016/06/16(木)(五十嵐太郎)