artscapeレビュー

写真に関するレビュー/プレビュー

palla/河原和彦 作品展「Natures─PALLALINKの10年」

会期:2013/10/22~2013/11/10

海岸通ギャラリー・CASO[大阪府]

pallaこと河原和彦と、彼を中心とするアーティスト・ユニットPALLLINKの、活動10年を記念した大規模展。河原の作品の特徴は、1枚の写真を幾重にも反転し重ねることにある。シンプルな反復作業から生まれるイメージは、驚くほど幻惑的で豊穣だ。当初は都市をモチーフにしていたが、その後、緑や海などの自然環境にまで範囲を拡張し、多様な作品を発表している。本展では、広大な3つの展示室を使用し、河原とPALLALINKの活動を網羅的に紹介していた。また、2点の新作のうち映像インスタレーション《運ぶ人/引き摺る男》(画像)は、ストーリーがある映画的な作品だった。この新機軸が今後どのように展開するのか楽しみだ。

2013/10/23(水)(小吹隆文)

ホンマタカシ「Pinhole Revolution / Architecture」

会期:2013/09/19~2013/10/26

TARO NASU[東京都]

TARO NASUで、ホンマタカシ「PINHOLE REVOLUTION ARCHITECTURE」展を見る。丹下健三らの建築をピンホール・カメラに変えたビジネスホテルの部屋によって撮影する新作と、ル・コルビュジエなどの建築の窓ごしの風景写真を組み合わせたものだ。またギャラリーの空間ごとピンホール化し、道路向いの風景を部屋に転写した作品も興味深い。

2013/10/23(水)(五十嵐太郎)

生誕100年! 植田正治のつくりかた

会期:2013/10/12~2014/01/05

東京ステーションギャラリー[東京都]

「生誕100年!」を迎えた植田正治の作品を、もう一度丁寧に見直し、再構築しようとする好企画だ。東京ステーションギャラリーでは1993年に「植田正治の写真」展が開催されている。この時は、彼の作品世界を初期から辿り、代表作を紹介するオーソドックスな回顧展だった。ところが、今回は時代を行きつ戻りつしながら、「植田正治という写真家は、どのようにひとつひとつの作品をつくりあげていったのか」を、145点の作品を通して読み解こうとしている。この20年の研究・調査の積み重ねの成果が、しっかりと活かされているということだろう。展示の構成は以下の通りである。
「I『童暦』──ディスカバー・植田正治 1950年代-1970年」「II演出の発明──出発枯らすタイルの確立まで 1931-1950」「III“小さい伝記”──回帰と反復 1970年代-1980年代」「�「植田正治劇場──ボクのスタジオ 1990年代-2000」。
植田本人の文章をふんだんに引用しつつ、写真と映像を絡めた展示は見応えがある。部屋から部屋へとさまよい歩くような、ステーションギャラリーのやや変則的な空間構成が、逆に彼の写真の多様な側面を浮かび上がらせるのにうまく働いていたと思う。展示の目玉は、なんといってもこれまで未発表だった奥さんをカラーで撮影した写真群(「ママと日傘」1949のヴァリエーション)と、植田の没後に未現像のままカメラの中に残されていたフィルムをプリントした11点の作品だろう。どこか寂しげな風景や窓辺を写した「最後の作品」にも、彼が「写真に対する精神的燃焼度」を最後まで保ち続けていたことがよくあらわれていた。

2013/10/22(火)(飯沢耕太郎)

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ホンマタカシ「Pinhole Revolution / Architecture」

会期:2013/09/19~2013/10/26

TARO NASU[東京都]

以前、ホンマタカシのなかには「写真家」と「編集者」という二つの人格がせめぎ合っており、時にそのバランスが崩れることがあると指摘したことがある。その議論を踏まえれば、今回TARO NASUで展示された新作の「Pinhole」シリーズでは、うまくそのバランスがとれているのではないかと感じた。
ピンホール・カメラは言うまでもなく写真機の原型というべき装置である。写真の歴史は、壁に開けられた小さな穴から外界の姿を反対側の壁に逆向きに投影し、その形状を画家たちが筆でなぞることから開始された。さらに1970年代には、現代美術アーティストの山中信夫が、自室の壁に印画紙を貼り巡らせて撮影した「ピンホール・ルーム」のシリーズを発表しており、近年も宮本隆司や佐藤時啓がピンホール・カメラの原理を作品に適用している。ホンマの新作シリーズでは、そのような写真史的な事項を巧みに引用しつつも、実際にさまざまな部屋にピンホールを仕掛けて、撮影、プリントする作業を心から楽しんでいるように見える。「写真家」としてスリリングな画像の形成過程に立ち会うことの歓びが充分に伝わってきた。TARO NASUに併設するスペースtaimatzで、実際にピンホール写真を撮影し、その場にインタレーションするという試みも非常に興味深いものだった。
展覧会のプレスリリースに以下のようなことが書いてある。ピンホール・カメラの撮影では、被写体にピントを合わせたり、フレーミングしたりすることはない。だから「これらは、どちらも被写体の(あるいは撮影者の)主体性を極力取り除き、あるがままの姿を映し出そうとする試みです。そしてこの作品における『主体性の欠如』こそ、ホンマタカシ“独特”の写真世界を形成する主要素であるという二律背反が、ホンマの作品の世界をより奥深いものにしていくのです」。
これはまったく違っていると思う。「Pinhole」シリーズをやろうと決め、該博な写真史的な知識を駆使し、単純に壁に穴をあけて光を取り込むだけでなく、わざわざ「REVOLUTION」という文字を鏡文字にして配置し、ロバート・フランクの1978年の作品「Sick of Goodby’s」を引用する──これらの操作に、ホンマタカシの「主体性」はあざといほど強烈にあらわれている。それこそ、「編集者・ホンマタカシ」の面目躍如たる部分であり、彼自身、被写体の「あるがままの姿」を捉えようなどとはまるで思っていないはずだ。
なお「Pinhole」シリーズのほかに、2002年頃から建築物の窓からの眺めを撮影し続けている「Architectural Landscapes」のシリーズも展示してあった。確かに「Pinhole」シリーズとネガ/ポジの関係にあるシリーズと言えそうだが、むしろ狙いが拡散してしまうように感じられた。

写真:Pinhole Revolution/Architecture series
© Takashi Homma Courtesy of TARO NASU

2013/10/22(火)(飯沢耕太郎)

プレビュー:注目作家紹介プログラム チャンネル4 薄白色の余韻 小林且典 展

会期:2013/11/02~2013/12/01

兵庫県立美術館[兵庫県]

兵庫県立美術館が4年前から始めた注目作家紹介プログラム「チャンネル」。その第4弾として、兵庫県龍野市出身の作家・小林且典を取り上げる。小林の作品といえば、イタリア留学時に修得した蜜蝋鋳造による、皿、瓶、壺などのブロンズと、それらを自作レンズのカメラで撮影した静物写真が挙げられる。本展では天井高7.2メートルの空間を生かして、床面に大量のブロンズと木彫を配置し、壁面にはカラープリントの新作とモノクロプリントを展覧。また、フィンランド滞在以来ラインアップに加わった木彫とブロンズの新シリーズも紹介される。

2013/10/20(日)(小吹隆文)