artscapeレビュー
生誕100年! 植田正治のつくりかた
2013年11月15日号
会期:2013/10/12~2014/01/05
東京ステーションギャラリー[東京都]
「生誕100年!」を迎えた植田正治の作品を、もう一度丁寧に見直し、再構築しようとする好企画だ。東京ステーションギャラリーでは1993年に「植田正治の写真」展が開催されている。この時は、彼の作品世界を初期から辿り、代表作を紹介するオーソドックスな回顧展だった。ところが、今回は時代を行きつ戻りつしながら、「植田正治という写真家は、どのようにひとつひとつの作品をつくりあげていったのか」を、145点の作品を通して読み解こうとしている。この20年の研究・調査の積み重ねの成果が、しっかりと活かされているということだろう。展示の構成は以下の通りである。
「I『童暦』──ディスカバー・植田正治 1950年代-1970年」「II演出の発明──出発枯らすタイルの確立まで 1931-1950」「III“小さい伝記”──回帰と反復 1970年代-1980年代」「�「植田正治劇場──ボクのスタジオ 1990年代-2000」。
植田本人の文章をふんだんに引用しつつ、写真と映像を絡めた展示は見応えがある。部屋から部屋へとさまよい歩くような、ステーションギャラリーのやや変則的な空間構成が、逆に彼の写真の多様な側面を浮かび上がらせるのにうまく働いていたと思う。展示の目玉は、なんといってもこれまで未発表だった奥さんをカラーで撮影した写真群(「ママと日傘」1949のヴァリエーション)と、植田の没後に未現像のままカメラの中に残されていたフィルムをプリントした11点の作品だろう。どこか寂しげな風景や窓辺を写した「最後の作品」にも、彼が「写真に対する精神的燃焼度」を最後まで保ち続けていたことがよくあらわれていた。
2013/10/22(火)(飯沢耕太郎)