2018年07月01日号
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artscapeレビュー

よそおいの細密工芸

2016年03月01日号

会期:2015/11/21~2016/02/14

清水三年坂美術館[京都府]

幕末から明治期の美術工芸品の収集で知られる清水三年坂美術館では、京薩摩にひきつづき、刀装飾や印籠、装身具の展覧会が開催された。出展品は、刀、印籠、煙草入れ、根付、かんざし、櫛など江戸時代の香りを残すものと、懐中時計、カフス、ペンダント、バックル、帯留め、指輪など、新しい時代の到来とともに西洋化がすすむ生活様式を伝えるもの、およそ80点である。そこに用いられるのは、金工、漆芸、彫刻などの洗練された意匠と高度な技巧。いずれも手にのるほどの大きさのものばかりだが、その小さなものに緻密で重厚な世界が描き出される。例えば煙草入れひとつとってみても、菖蒲の模様を染め抜いた革製の袋には龍を象った前金具が配され、腰差の煙管入れの筒には黒地に金で女郎花の蒔絵が施されており、さらに両者をつなぐ紐にはアクセントとなるべっ甲の緒締がついている。革、金工、漆芸など、さまざまな工芸技術が一点の携行品に惜しみなく盛り込まれ凝縮していることには驚かされる。手法はそのままに、カフスやペンダントトップ、ブレスレットといった西洋風のものにみられる和洋混在の奇妙な魅力も興味深い。明治期とくに明治前期には、こうした日本の美術工芸品が輸出品としておおいに期待されたという。いかに小さなものであっても、むしろ小さなものだからこそ、そのずっしりとした佇まいには日本の命運を背負って立つという名工たちの気負いや誇りさえ感じられた。[平光睦子]

2016/02/13(土)(SYNK)

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