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2016年06月01日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:ポール・スミス展 HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

会期:2016/06/04~2016/07/18

京都国立近代美術館[京都府]

イギリスを代表するファッション・デザイナーのひとり、ポール・スミスの人生と業績を、約2800点もの作品や資料で回顧する大展覧会。彼の最初のショップや現在のオフィス、デザイン・スタジオなどを再現するほか、歴代コレクション、彼の頭の中のイメージを再現する映像インスタレーション、美術コレクション、私物などが出展され、多角的な視点からポール・スミスのクリエーションの秘密に迫る。なお、本展は2013年にロンドンのデザイン・ミュージアムで開催された展覧会の日本巡回であり、日本では1998年に行なわれた「ポール・スミス トゥルー・ブリット展」に続く2度目の大規模なポール・スミス展となる。

2016/05/20(金)(小吹隆文)

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プレビュー:長島有里枝「縫うこと、着ること、語ること。」

会期:2016/06/17~2016/07/24

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)[兵庫県]

昨年10月からKIITOアーティスト・イン・レジデンス招聘作家として神戸で滞在制作を行なってきた長嶋友里枝。その成果発表展となる本展は、彼女の私生活のパートナーの母親(神戸在住)とともに制作したテントとタープ(キャンプ用の日よけ)、滞在中に撮影した写真によるインスタレーション的構成となる。写真はタープの素材となる古着を集める際に出会った女性たちを取材したもので、写真撮影のほか、捨てたいのに捨てられない古着を持つ彼女たちの思いも聞き出している。長島は今年春に自身の母親とテントとタープを共作しているが、本展はその進化形と言えそうだ。

2016/05/20(金)(小吹隆文)

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メディチ家の至宝 ルネサンスのジュエリーと名画

会期:2016/04/22~2016/07/05

東京都庭園美術館[東京都]

日伊国交樹立150周年を記念して開催される展覧会のひとつ。イタリア絵画を紹介する展覧会がいくつも企画されているが、本展はルネサンス文化発祥の地、フィレンツェに300年に渡って君臨し、芸術のパトロンであったメディチ家に焦点を当て、フィレンツェ・ウフィツィ美術館(銀器博物館)などのコレクションから彼らの肖像画と宝飾品のコレクションを紹介する展覧会。
フィレンツェで商業と銀行業で富をなした老コジモ(1389-1464)、痛風病みのピエロ(1416-1469)、ロレンツォ豪華王(1449-1492)らが同時代の芸術家たちを支援したことは言うまでもないが、他方で彼らは古代ギリシア・ローマのコイン、メダル、彫玉(カメオ、インタリオ)などのコレクターであった。彼らはこれらのコレクションを書斎に飾り、訪れる賓客、美術家たちに見せ、美術家たちはそれを写したり、絵画のモチーフに活かしたと考えられるという。彼らは古代の彫玉を貴金属のフレームで飾り、破損したカメオを金細工で補修し、また同時代の工芸家たちに新しい作品を作らせた。こうした経緯から、本展に出品されている宝飾品は年代別ではなく、蒐集者の視点で構成されている。作品を見るときは制作年代に注意が必要だ。
アーニョロ・ブロンズィーノ(1503-1572)など同時代の著名な画家に依頼して描かれた肖像画は美術品であると同時に一族の歴史を物語る資料だ。ルイジ・ファミンゴ作と推定されているロレンツォの肖像は宝飾品を身につけていない。共和制の都市フィレンツェで、初期のメディチ家の人々は事実上の支配者としての地位を固めつつあったが、形式的には市民であり、商人の伝統に従って、通常は質素な服装で過ごしていた。宝飾品は富を象徴するコレクションであっても、権威を示す用途で身につけられた訳ではないらしい。老コジモの父、ジョヴァンニ・デ・ビッチ(1368-1429)が遺した「公衆の目の届かないところにとどまっていなさい」という言葉に従ったのだろうか。しかし、16世紀以降、君主となったメディチ家の人々にとって、宝飾品は重要な役割を果たすようになったという。とりわけ、メディチ家の女性たちの肖像は膨大な数の宝飾品を身につけている。なかでもフランス王アンリ2世妃となったカテリーナ・デ・メディチ(1519-1589)の肖像に描かれた宝飾品の数々──とくに無数の真珠──には圧倒される。
残された財産目録によってメディチ家の人々が所有していた宝飾品が知られている一方で、肖像画に描かれたジュエリーで現存するものはほとんどないと聞いた。持ち主の経済的な危機において貴金属類は換金され、また衣裳に縫い付けられた宝石類には解体、再利用されたものも多いという。[新川徳彦]


本館展示風景

2016/05/23(月)(SYNK)

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