artscapeレビュー
ルキノ・ヴィスコンティ『ベニスに死す』
2011年12月01日号
会期:2011/010/01~2011/11/11
テアトル梅田ほか[大阪府]
イタリア・ネオリアリズム映画の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督(1906-76)の代表作のひとつ『ベニスに死す』(1971年、イタリア・フランス、131分)がニュープリント版となって上映された。ドイツの文豪パウル・トーマス・マンの同名小説を映画化した作品で、主人公のモデルとなったのはロマン派の作曲家グスタフ・マーラーだと言われている。物語は単純で、静養のためベニスを訪れたドイツの大作曲家が滞在先のホテルで出会った美少年に究極の美を求めるという話。出身は貴族、青年時代は熱心なコミュニスト、晩年は耽美主義者と言われたヴィスコンティ監督と彼の映画を一言で定義するのは難しい。ヴィスコンティ研究者でさえも彼の映画の核心を掴み取ることは容易ではないと言うほど。本作はヴィスコンティの晩年の作品で、晩年の傑作という讃辞と、無味乾燥で退廃的という批判を同時に受けた。どちらにしろ、老巨匠がくれた荘厳なまでに美しい画面を楽しめるのは幸運なことではないか。[金相美]
2011/11/09(水)(SYNK)