artscapeレビュー
バナナ学園純情乙女組『バナ学☆★バトル熱血スポ魂秋の大運動会』
2011年12月01日号
会期:2011/010/26~2011/11/01
グリーンシアター BIG TREE THEATER[東京都]
秋葉原的なもののみならず、モー娘。やらAKB48やらZONEやらオザケンまでもがみじん切りにされ、数十名の出演者たちは歌い踊りながら観客に噛みつき、キスし、ポンポンを投げ、ヤジを飛ばし飛ばされながら、舞台という鍋のなかでぐつぐつ煮込まれる。観客は、爆音のなか、本物の水や豆腐やわかめ(!)が飛ぶなか、出演者たちにおびえ、ヤジを飛ばされ飛ばし返しながら、ひたすらそのカオティックな煮物を鑑賞するというより浴びるのだ。若さという武器が、無意味な、たんなるカロリー消費としてしか使えない現実にいらだちつつも、なりふりかまわず振り回してみる。アゲかサゲしかない青春という名の地獄がここにある。「カオス」という意味では、この「鍋」状態は「カオス*イグザイル」を何十倍か凌駕し、観客にヲタ芸をやらせる巻き込み力は、観客に旗を振らせたロメオ・カステルッチのうながしを何十倍か凌駕する。雨合羽を着た観客が瞬間瞬間の出来事におびえ爆笑するその60分の地獄めぐりは、劇団OM-2を微かに彷彿とさせるものの、圧倒的なへたれ感はあまりに現代的であまりに日本的で「パフォーマンス」なるものの枠から激しく逸脱している。なにも記憶に残らず、ただ体の火照りだけがいつまでも消えない。この感覚こそ彼らが観客の内に刻みつけようとしているものなのだろう。これが演劇なのかダンスなのかアートなのかなんなのかは、さしあたりどうでもいいことだ。すべての価値がフラット化し、ゆえにすべてが限りなく無価値になってゆく焦土と化した世界。そこで灰に火をつけるかのような表現が若い女性作家の手によって遂行されているという事実。そこに未来を感じたい。
2011/10/31(月)(木村覚)