artscapeレビュー
写真新世紀 東京展 2011
2011年12月01日号
会期:2011/10/29~2011/11/20
東京都写真美術館[東京都]
34回目を迎えた「写真新世紀」展。1,300人を超える応募者数から厳選された優秀賞5名および佳作20名の作品とファイルがあわせて展示された。注目したのは、坂口真理子と鈴木淳。坂口の《訪々入浴百景》はさまざまな家庭や職場に湯船を持ち込み、その場の日常風景の只中で入浴する坂口を映したシリーズ。表情をつくるわけでもなく、かといって殺すわけでもなく、他人の空間でいたって普通に湯につかる坂口の表情がおもしろい。一方、鈴木淳の《だれもいない、ということもない》は、街の風景をとらえた凡庸なスナップショットだが、よく見るとそこに映し出されている人たちはいずれも顔が見えない。つまり、みんながみんなあちら側を向いていて、こちら側を見ていない瞬間をとらえたわけだ。生身のまま被写体と対峙する坂口と、被写体に見られることなく見る鈴木。前者の関心が交流の先に訪れる孤独だったとすれば、後者のそれは孤独の先にやってくる交流と言えるのかもしれない。
2011/11/17(木)(福住廉)