artscapeレビュー
ほうほう堂『ほうほう堂@緑のアルテリオ』
2011年12月01日号
会期:2011/011/24~2011/11/27
川崎アートセンター アルテリオ小劇場[神奈川県]
ほうほう堂(新鋪美佳+福留麻里)が美術作家・淺井裕介と映像作家・須藤崇規とつくった本作は、三者の力がバランスよく発揮された傑作だった。淺井のマスキングテープによる植物や小動物が建物のあちこちに描かれ、それは通路階段や舞台の床面にも展開されている。生命の息吹に取り囲まれたような気分で待っていると、ほうほう堂の小さな二人が登場。彼女たちの、ふわっと軽快で自意識を感じさせない振りは、ときにユニゾンになりときに別々になり、まるで二匹の小動物のようだ。しかし、本当に驚いたのはここから先。二人が舞台から姿を消す。すると舞台奥の巨大なスクリーンに舞台脇の通路が映され、そこに二人はあらわれた。リズミカルな音楽に合わせたり外したり、映像の二人が躍動することで、舞台に穴が穿たれ、それによって、あちこちうごめく「生命の力」とでもいいたくなるなにかが感じられた。その後の、ほうほう堂が踊る映像の上に淺井がライブで動物のかたちや線とか点とかを重ねていくシーンも美しく、ある種の絵本のようにダイナミックだったけれども、なにより圧巻だったのはラストシーン。ほうほう堂の二人が三階のカフェスペースに観客を誘い、しばしそこで観客のなかに分け入って踊ったかと思いきや、建物を飛び出し、外で踊り出す。すると、舗道にはアニメーションが映写され、アニメの樹木や鳥たちとほうほう堂が絡まり合った。このシーンは、それまでのイメージが劇場空間をはみ出し、日常に奔出したかのようで、それはそれは素晴らしく美しい光景だった。二人が街灯に手をかけるとまるで映画『雨に唄えば』のよう。その瞬間は確かに、日常空間を空想で染めるミュージカルの魔法に匹敵するなにかだった。劇場の外で踊りそれを映像に収めるという、近年ほうほう堂が行なってきた試みが、こんな空想的なイメージの重なり合いへと結実するなんて! 感動しました。
2011/11/25(金)(木村覚)