artscapeレビュー

荒木経惟─人・街─

2011年12月01日号

会期:2011/10/02~2012/01/09、2012/01/14〜2012/03/20

世田谷美術館分館 宮本三郎記念美術館[東京都]

荒木経惟の写真展。《さっちんとマー坊》や《東京ラッキーホール》、《TOKYO NUDE》など、小規模ながら手堅い構成で荒木の写真を見せた。特に見どころなのが、初期の写真を収めたスクラップ・ブック。全紙サイズの巨大で厚みのあるスクラップ・ブックが、壁に貼り出された写真以上に、凄まじい迫力を放っている。さすがに直接触れることはできなかったものの、そこに収められたプリントはデジタル画像に変換されてモニターで流されていた。もちろんオリジナル・プリントのアウラがないわけではない。ただそれ以上に濃厚に感じ取れたのは、みずからの作品をあくまでもこのサイズで見せようとする写真家としての意気込みだ。ページをめくることが煩わしくなろうが、重たくて持ち運びにくくなろうが、関係ない。なんならすぐにでも搬入できると言わんばかりの強い意志がまざまざと感じられる。小ぶりで手ごろなサイズにまとめがちな昨今の写真家にとって、荒木の重厚なファイルはそれ自体がひとつの作品として映るのではないだろうか。

2011/10/28(金)(福住廉)

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