artscapeレビュー

宇山聡範「after a stay」

2012年07月01日号

会期:2012/05/28~2012/06/02

Port Gallery T[大阪府]

ビジネスホテルの客室の一隅を撮影した写真が並んでいた。日陰の室内は全体的にブルーがかった色調で、生活感がまったく感じられない。一瞬、トーマス・デマンドのようにつくりものの空間を撮っているのかと疑ったほどだ。意外だったのは、どこでも同じようなものだと思い込んでいた客室が、実はホテルごとにバリエーションが豊かなことだ。宇山は撮影の仕事で国内各地を飛び回るうちに、これまで自分がホテルの客室に注意を払っていなかったことに気付いたという。つまり、“あまりにも当たり前すぎて、視界に入っているだけで何も見ていない空間”が本作のテーマである。そのため、作品には徹底して個性や感情が省かれている。そのひんやりした虚無感も本展の見応えであろう。

2012/05/28(月)(小吹隆文)

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