artscapeレビュー
プレビュー:パディントン ベア™展──イギリスで誕生した愛らしいクマの物語
2012年07月01日号
会期:2012/07/07~2012/09/02
伊丹市立美術館[兵庫県]
帽子とダッフルコートを着た愛らしいクマのキャラクターとして知られる「パディントン」の原画展。2012年5月まで東京で開催された「パディントンベア原画展」(池袋西武本店)の関西巡回展だが、関西のみの出品作も加わり、内容をヴォリュームアップして開催される。とくに注目すべきは、1970年代にイギリスの新聞で連載された四コマ漫画の原画が今回、特別に展示されることだろう。同原画の作者であるアイバー・ウッドは、BBCで放映されたパペットアニメ版も手がけており、パディントンを描いた数多くのアーティストのなかでも、そのヴィジュアルイメージの確立に貢献した人物といえる。実際、このクマのキャラクターは、1958年刊行のマイケル・ボンドの児童小説の挿絵として初めて登場して以来、小説の絵本化や漫画化、アニメ化、キャラクターグッズとしての商品化等を経てきており、その間、異なるアーティストが制作にかかわることで、パディントンの描かれ方も徐々に変化してきた。本展では、ペギー・フォートナムが手がけた最初の挿絵の原画を初め、フレッド・バンベリーやデヴィッド・マッキーなど、さまざまなアーティストによる絵本等の原画も時代を追って展示される。そこに、イラストレーションのスタイルの変遷や、表現媒体の差異が生み出すキャラクター表現の変化の反映を見出すのも本展の楽しみのひとつだろう。さらには、ボンドゆかりの品やパペットアニメ化の資料、貴重なぬいぐるみも展示される。日本ではパディントンは、1980年代にソニープラザがそのグッズを扱ったことで一躍知られるようになったが、東京展は連日、そのノスタルジーに浸る声で溢れかえっていたらしい。つまり、パディントンは、キャラクタービジネスの元祖ともいうべき存在であり、そのメディアミックス的展開の側面をも概観する本展は、子どもはもちろん大人の美術愛好者も楽しめる内容だ。東京で好評を博した公式限定グッズも、今回、ミュージアムショップで販売されるそうで、それもまた楽しみだ。[橋本啓子]
2012/07/02(月)(SYNK)