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プレビュー:トヨタコレオグラフィーアワード2012、Nibroll『see/saw』

2012年07月01日号

今月は二年に一度の一大イヴェント、トヨタコレオグラフィーアワード2012(最終審査会:2012年7月22日@世田谷パブリックシアター)が開催される。「コンテンポラリー・ダンス」という言葉では括りきれない今日のダンス振付家たちが競う。チェルフィッチュの岡田利規など、演劇系の作家が参加してきたことでも知られているが、今回は篠田千明がどういったパフォーマンスを見せ、どうダンスの現場を揺さぶるかに話題が集まりそうだ。
今月忘れてはならないのは、Nibroll(ニブロール)の新作『see/saw』(2012年7月20~8月12日@ヨコハマ創造都市センター)。結成から15年目となる今年、Nibrollは音楽、美術、衣裳、映像などの作家集団から、振付の矢内原美邦を中心としたダンスカンパニーとして再出発した。先日、10年前の旧作を映像で見ていたのだが、キレる若者を表象していると言われたあのころの上演が牧歌的だなと思ってしまうほど、近年のNibrollは猛烈に速く強くアグレッシヴで、他の追随を許さない独特の方向を進んできたにもかかわらず、その選択が今日のNibrollに現代的なリアリティを与えているのだなと再確認させられた。今作は3週間、10公演を超える初のロングラン公演としても話題となっている。映像作家の高橋啓祐と矢内原によるoff-Nibrollの新作『a quiet day』も『see/saw』上演前に披露される予定。これは日替わりで出演者が変わる1人芝居だそうだ。

2012/07/02(月)(木村覚)

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