artscapeレビュー
Face to face: Art in Auschwitz
2017年11月01日号
会期:2017/07/07~2017/11/19
クラコフ国立美術館[ポーランド、クラクフ]
クラコフの国立美術館分館にて、アウシュヴィッツ博物館の70周年記念として企画された「Face to face:アウシュヴィッツのアート」展を見る。てっきり戦後に描かれた作品かと思いきや、そうではなく、まさに強制収容所で制作された絵だけを紹介しており、極限状態のアートとして衝撃的な内容だった。最初の部屋は、ナチスが描かせた絵画(壁画や非公式に画才のあるユダヤ人に描かせ、家族や友人へのプレゼントに持ち帰ったとても「普通」の絵)、第二の部屋は、過酷な労働状況や虐待を描いた作品。第三の部屋は、ユダヤ人たちの肖像画(もちろん、隠れて描いた息抜きの作品)、そして最後は現実逃避として理想を描いた作品。とりわけ瓶の中にスケッチ群を隠し、1947年に発見されたやや漫画タッチの絵が(描いた人も不詳)、残虐な事態を鮮明に伝えており、鬼気迫るものがあった。それにしても、これだけ多くの絵が強制収容所で密かに描かれ、また残ったことから、言葉ではない、絵という視覚芸術の凄みを再認識した。
写真:左中=家族や友人へのプレゼントに持ち帰った絵、左下=壁画、右上=過酷な労働状況や虐待を描いた作品、右中=肖像画
2017/09/15(金)(五十嵐太郎)