artscapeレビュー
「織物以前 タパとフェルト」展
2017年11月01日号
会期:2017/09/08~2017/11/21
LIXILギャラリー大阪[大阪府]
織機が生まれる以前、布の始まりはどのようなものだったろう。本展は、オセアニア(パプアニューギニア、フィジー、トンガ)の「タパ(樹皮布)」と、東南アジア(新疆ウイグル自治区カシュガル、トルコ)の「フェルト」を紹介し、布文化の始原を探るもの。そもそも、機織りによる織布は、オセアニアのごく限られた地域にしか伝播しなかったという。その代わりに不織布、つまり編布やタパが発達して、今日にまで伝えられている。タパは、カジの木の外皮を剥がし、水に晒して柔らかくした後、ハンマーなどで叩いて伸ばして作る。一見、紙のようにも見える素朴な材質感が魅力だ。製造に使う道具も展示で見ることができる。しかしその魅力を最大限にまで高めているのが、民族独自の装飾文様である。展示品の出品者でもある福本繁樹氏によれば、その装飾には神話、氏族の由来や名誉を表す重要な意味がある。皮膚に施すボディペインティングが、衣に変容したものと見られるそうだ。一方、遊牧民族が用いるフェルトのあたたかみにも独特の味わいがある。羊毛を幾層にも重ねて熱や圧などで加工し、シート状にしたものがフェルト。珍しい形のマントやアースカラーの美しい敷物が展示されている。世界の豊かな民族文化に触れて、手仕事と技術発展の意味、そして衣を纏うことの歴史の重層性について考えさせられる。[竹内有子]
2017/10/2(日)(SYNK)