artscapeレビュー

柴田知佳子展

2017年11月01日号

会期:2017/10/16~2017/10/28

ギャラリー白kuro[大阪府]

ギャラリー白には、画廊にしては珍しいブラック・キューブの空間がある。ここでは立体の展示が多いが、柴田知佳子は絵画でもこの空間を生かせることを証明した。展示作品は1点のみ。天地2m×左右6mの大作で、壁の長さより大きいため空間を斜めに横切るように展示された。作品は主に深い青(群青とも紫とも)と黒を用いた抽象画で、ほかにも複数の色彩が用いられている。特に金の使用は効果的だった。ストロークは縦方向が基調で、そのスピードや調子、太さが自在にコントロールされながら左右に広がっていく。筆者は横長の絵画を見る時に右から左へと見る癖があるのだが(絵巻物や書籍の影響)、作品を舐めるように見つめていくと次々に移り変わる画面に魅了され、陶酔的な気分を味わった。作品が大きいため一度に全体を把握するのは不可能で、何度も作品の前を動き回ることになるのだが、どれだけ見ても視覚的快楽は尽きない。じつに深い絵画体験だった。あえてひとつ不満を述べると、作品の一部がどうしても部屋に入り切らず別の壁に展示されていた。作品全体を見てほしいという作家の意向は分かるが、この会場では不要だったと思う。

2017/10/17(火)(小吹隆文)

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