artscapeレビュー
ワルシャワ蜂起博物館
2017年11月01日号
[ポーランド、ワルシャワ]
ワルシャワ蜂起博物館は、ナチスに抵抗した市民が戦闘の結果、徹底的に叩きつぶされ、街が破壊された記憶を伝える。なお、戦後も共産主義のもと、この歴史は正当に評価されず、1989年以降の民主化を経て、ようやく機運が高まり、博物館が整備されることになった。ゆえに、執念を感じる展示である。また廃墟と化したワルシャワの状態を、CGによって復元し、3Dで見せる映像を見ると、広範囲にわたって破壊されたことがわかる。旧王宮の内部を見学すると、派手な部屋が続くが、すべて復元である。戦災で街並みの多くは壁だけは残っていたが、これは入念に破壊され、壁すらほとんど残らなかった。街のシンボル的な建築ゆえに、徹底的に狙われたのかもしれない。そして戦後に復元が決まるも、いったん中断し、市民の寄付や労働奉仕によって、1970年代に工事が完成した。なお、戦時中から美術史の研究者や建築家らが活躍し、絵画を避難させたり、王宮の復元にこぎつけた背景も、詳しく紹介されていた。
写真:上4枚=《ワルシャワ蜂起博物館》、3段目=旧王宮外観、4段目=復元された旧王宮内部、左下=破壊された王宮、右下=王宮復元の募金箱
2017/09/13(水)(五十嵐太郎)