artscapeレビュー
アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所
2017年11月01日号
[ポーランド、オシフィエンチム]
アウシュヴィッツの建築群はもともとポーランドの兵舎を転用したもので、更地に建設したビルケナウの床もないバラックに比べると、ちゃんとしている。ただ、28棟に最大2万人以上がいたという数字は、建築計画的に信じがたい密度であり、機能主義どころか、人をモノとして詰め込めば、なんとか可能なレベルだ。例えば、11号館の地下、直立房はひたすら立たせる懲罰牢で、90cm四方の空間である。1人を入れるのかと思いきや、調べるとここに4人を閉じ込め(確かにこれでは人間そのものが場所を埋め尽くし、物理的に座るスペースなどなくなる)、空気孔も小さく、立ったまま死んだらしい。想像を絶する空間の使い方である。アウシュヴィッツ強制収容所から2kmほど行くと、広大なビルケナウがあり(こちらはガイド形式の必要はなく、人数制限もない)、鉄道が死の門に引き込まれる有名な姿はここだ。証拠隠滅をはかって、ナチスがクレマトリウム(焼却炉)を爆破した廃墟のほか、見渡す限り、バラックや暖炉だけ残る廃墟が無数に並ぶ。一部はバラック内も見学できるが、基本は野外展示だ。
写真:上=ビルケナウ、3段目右=煙突だけが残る木造バラック、4段目右=破壊されたクレマトリウム
2017/09/14(木)(五十嵐太郎)