artscapeレビュー

香港と深圳の新しい名所《オーシャンターミナル・デッキ》《深圳海上世界文化芸術中心》ほか

2018年03月15日号

[中国]

深圳都市建築ビエンナーレが開催されているタイミングで数年ぶりに香港を訪れた。香港から深圳に移動するには、現在もいったんは電車を降りて、パスポート・コントロールを歩いて通過するが、将来これがなくなれば、2つの都市はさらに一体感を強めるだろう。今年は急激な都市化を象徴する城中村を会場としており、展示そのものよりもビエンナーレを口実にして、普段は立ち入らないようなエリアを体感できたことが印象深い。足を運んだ南頭古城も、古い城を村が包み、さらにその周囲が完全に都市化した場所だった。また昨年オープンしたばかりの槇文彦が設計した《深圳海上世界文化芸術中心》は、周囲がテーマパーク的なエリアで、派手な建築が並ぶだけに、モダニズムをベースにした白い建築がさわやかに映った。歴史的なコンテクストがないなかで、周辺環境と応答しつつ、あちこちに出入り口を設け、内部にも抽象的ながら、街並みのような空間をつくっている。

一方、香港の九龍サイドにあるハーバーシティのモールを抜けて、大型客船が横付けするオーシャンターミナルの先端にノーマン・フォスターによる増築が行なわれ、《オーシャンターミナル・デッキ》として昨年オープンした。素晴らしいデザインである。立地の良さを最大限に生かし、乗船客やレストランの客だけでなく、誰にでも開かれた香港の絶景を堪能できる空間的な仕掛けを、いくつかの高さのレベルで付加している。無駄な装飾やわざとらしい造形はない。建築家とは、かくあるべきだという見本のような作品である。話題の美術館、《M+》のオープンは遅れていたが、工事現場の横に「M+パヴィリオン」が設置されているのを知り、見学した。西文化区はまだ開発中のため、けっしてアクセスは良くない。公園を抜けると、途中から柵で構成された迷路を歩く。ヴェネツィアビエンナーレ国際美術展に参加したサムソン・ヤンの個展を開催しており、災害支援ソングをネタにしたおもしろい作品で、空間のつくり込みもよかった。

《オーシャンターミナル・デッキ》



《深圳海上世界文化芸術中心》


「M+パヴィリオン」

2018/02/21(水)(五十嵐太郎)

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