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artscapeレビュー

土田ヒロミ『フクシマ 2011─2017』

2018年03月15日号

発行所:みすず書房

発行日:2018/01/25

土田ヒロミの執念が、大判ハードカバーの写真集として形になった。土田は東日本大震災の後、「ひとりの表現者としてどのように向き合えばよいのか」と悩み抜いていたが、まずは福島第一原子力発電所の大事故で避難指示が出た地域の「ボーダー線上を歩いてみることから始めよう」と心に決める。2011年6月から開始されたその撮影の作業は、6年越しで続けられ、今回写真集にまとめられた。

土田の方法論は明確である。デジタルカメラによって、風景の細部をきっちりと押え、ひとつの場所を何度も繰り返し訪れることで、定点観測的に画像が蓄積されていく。その結果として、いくつかの季節を経て微妙に姿を変えていく「フクシマ」のベーシックな環境が、撮影された日付と地名を添えて淡々と提示された。だが読者は、どうしてもそれらの一見静穏なたたずまいの写真群に、見えない放射能の恐怖を重ね合わせないわけにはいかなくなるだろう。さらに、2013年頃から開始された除染作業によって、大地は削り取られ、それらの土壌廃棄物を詰め込んだ「フレコンバッグ」が、あちこちの「仮々置き場」に不気味に増殖していく。時折あらわれる、白い防護服を来た人物たちの姿や、さりげなく写されている線量計なども、ここが「フクシマ」であるという現実を突きつけずにはおかない。

土田の代表作のひとつは、原爆が投下された広島のその後を検証した「ヒロシマ三部作」である。その彼が「フクシマ」に向き合い始めたことに、写真家としての役割を全うしようという強い意志を感じる。それは同時に「人類が直面している人と自然との関係の文明的危機」を受けとめ、投げ返そうという渾身の営みでもある。

2018/02/27(火)(飯沢耕太郎)

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