artscapeレビュー

野村恵子「OKINAWA」

2018年03月15日号

会期:2018/02/07~2018/03/11

POETIC SCAPE[東京都]

野村恵子の写真集デビューは『Deep South』(リトルモア、1999)だが、それ以来ほとんどの写真集に沖縄で撮影された写真がおさめられてきた。この「日本の最南端、美しい珊瑚礁の海に浮かぶ大小の島々からなる、沖縄」(野村によるコメント)に対する思い入れは相当に深いものがある。そのひとつの理由は、母方のルーツが沖縄にあることだが、それだけではなく、南島の空気感や強烈な光と影のコントラスト、生々しい原色が氾濫する色彩感覚が、彼女の感性とぴったりシンクロしているからではないだろうか。ポルトガルの出版社、Pierre von Kleist Editionsから同名の写真集が刊行されたことを受けて開催された本展の、どの写真を見ても、沖縄を撮ることへの確かな安らぎと歓びとを感じとることができる。

だが、前作の『Soul Blue』(Silver Books、2012)からすでに5年以上が過ぎ、そろそろ安定した水準を突き抜けて次の世界へと出て行く時期に来ている。沖縄の人や自然はこれから先も撮り続けられるだろうし、「私の魂もいつか、この島に還ると思っています」という確信にも揺るぎないものがありそうだ。とすれば、いま野村に必要なのは、むしろ沖縄からできるだけ遠く離れてみることなのではないだろうか。それは彼女自身も自覚しているようで、狩猟をテーマにした新作が少しずつ形を取り始めているという。1990年代にデビューした野村と同世代の女性写真家たちの多くが、ちょうどいま成熟の時期を迎えつつある。次回の新作の発表に期待したい。

2018/02/22(木)(飯沢耕太郎)

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