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きたまり/KIKIKIKIKIKI グスタフ・マーラー交響曲第2番ハ短調「復活」

2019年10月15日号

会期:2019/09/20~2019/09/22

THEATER E9 KYOTO[京都府]

「マーラーの全交響曲を振り付ける」という壮大なプロジェクトに挑む、ダンサー・振付家のきたまり。シリーズ第4弾となる本作は、マーラーの交響曲第2番「復活」が使用された。過去の3作品が上演された京都のアトリエ劇研は、2017年に惜しまれつつ閉館。同劇場のディレクターだった演出家・劇作家のあごうさとしを中心に新たに立ち上げた劇場「THEATER E9 KYOTO」のオープニングプログラムのひとつである本作は、「劇場の復活」という意味でも示唆的だ。舞踏出身の山田せつ子、バレエを基礎に持つ斉藤綾子という異なる出自を持つダンサーを共演者に迎えた本作は、それぞれの身体性の相違に加え、それを際立たせるソロ→デュオ→トリオという構成の流れ、扉の開放のタイミング、背後のスクリーンを染め上げるライブペインティングによる音と視覚の相乗効果など、演出力の高さが際立っていた。

冒頭から約30分ほどは、山田せつ子のソロが続く。変幻自在に展開し、掴みどころのないマーラーの楽曲に抗うように、陶酔とカタルシスの彼方へ押し流そうとする力に拮抗するように、ミニマルな微動に徹し、時に痙攣的に身を震わせる山田。音楽に支配されるのではなく、音楽を含むその場すべてを支配しようとする強い意志がみなぎる。重厚に張りつめた空気は、だが、山田が退場とともに開け放った扉から、外気と夕暮れの風景が流れ込んでくることで一新される。続けて、きたと斉藤のデュオが展開されるが、左右対称を保ったユニゾンの厳密性は、むしろ両者の身体性の違いを際立たせる。



[撮影:中谷利明]


きた、斉藤のソロを挟んで、3者が揃った後半のトリオは圧巻だ。腰を落とし気味に頭を左右にリズミカルに振り、マーラー(とその背後にある「ヨーロッパ」)を異化するようなきたの動き。両手を広げて天を仰ぎ、永遠に終わらない恍惚あるいは拷問のように、倒れるまで回転し続ける斉藤。毅然さを保ち、かと思うと2人を挑発するように撹拌的な動きを繰り広げる山田。重厚なコーラスが響き、仙石彬人によるOHPを用いたライブペインティングの投影が、無彩色からマーブル状に混じり合った鮮烈な色彩に背後の壁を染め上げていく。細胞の増殖、あるいは燃え上がる炎、極彩色に開く花びら、沸騰する赤い血潮。「なぜマーラーなのか」という問いを吹き飛ばす、「踊り続ける、なぜなら生まれてきてしまったから」とただ主張する強い3つの身体がそこにあった。



[撮影:中谷利明]


2019/09/22(日)(高嶋慈)

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