artscapeレビュー
ロロ「窓辺」 第1話『ちかくに2つのたのしい窓』
2020年05月15日号
会期:2020/04/19~2020/04/25
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離れた土地で暮らす人々の、ビデオ電話でのコミュニケーションを描く連作短編通話劇シリーズ「窓辺」をロロが開始した。出演俳優は実際にZoomを使って会話劇ならぬ「通話劇」を演じ、記録映像ではなくYouTube上で生配信される。第1話『ちかくに2つのたのしい窓』は、3日間で計6ステージが上演=配信された。
スマホを手に、「オンライン飲み会」をする30代の男性2人が登場人物。それぞれ地元の仙台と東京で離れて暮らす高校時代の同級生だが、互いに想いを寄せ合う関係性が次第に明らかになっていく。それは、離れて会えないからこそ貴重で愛おしく、言葉にすると脆く壊れてしまいそうな、繊細な感触だ。「どんなに手を伸ばしても届かない相手への、一途で切ない想い」は、ロロが得意として描いてきたが、本作では、「ひび割れたスマホの液晶画面越しに、傷の付いた(ように見える)相手の頬に触れる」というやり取りが効いていた。それは、「修復不可能な亀裂の入った日常」の比喩であるとともに、「Zoomを用いて演じる」設定の消化と物語の消費を超えて、これが「演劇」として成立することの担保としても機能していた。「ひびの入ったスマホで相手の顔を見ながら会話している」設定だが、当然、観客が見ている画面には、その「ひび=傷」は映らない。だがそこにこそ、演劇的想像力の駆動する余白が生まれる。
画面の向こうの相手に繋がろうと、『E.T.』を真似て液晶画面に人指し指を付けて言う「ともだち」から、「友達、パートナー、恋人……。どんな関係でもお互いが納得していればそれでいい」という台詞への繋ぎ方や、冒頭で歌われた鼻歌が「架空の魔法少女アニメの主題歌」として劇中で反復され、「テレポーテーション 窓を抜けて 瞬間で手をつなぐ」という歌詞のメタ性とともに回帰する構造など、20分という短編だが、よく練られていた。
また、「スマホでZoomを介した会話」という本作の設定および実際の使用は、「視聴デバイスによって、観劇体験が左右される」という面に気づかせる(本作の場合、PCやiPadよりも、スマホ視聴の方がより臨場感や親密さが高いだろう)。ロロは今後、5月中旬に第2話、6月上旬に第3話の配信を予定している。シリーズを通して、Zoom演劇の面白さや可能性がどう開拓されていくのか、楽しみに待ちたい。
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