artscapeレビュー

ロロ「窓辺」 第1話『ちかくに2つのたのしい窓』

2020年05月15日号

会期:2020/04/19~2020/04/25

ロロが新たに立ち上げたシリーズ「窓辺」は、離れた土地で暮らす人たちのあるひと晩のビデオ電話を切り取った連作短編通話劇。すでに4月に第1話『ちかくに2つのたのしい窓』が上演され、5月22日(金)〜24日(土)には第2話『ホームシアター』の、6月上旬には第3話の上演も予定されている。YouTubeLiveを使った生配信形式の作品は「ビデオ通話」というシンプルなシチュエーションを用いながら、劇場で上演されてきたこれまでのロロの本公演や「いつ高」シリーズと同じく「いまここに(い)ないもの」への想いをかき立てる。いや、そこには「いまここにいないもの」とつながることを可能にしながらも不十分でしかあり得ないビデオ通話だからこその親密さとさみしさがあった。

[Photo by Masami Ihara]

さて、ここからは作品内容に触れるが、第1話『ちかくに2つのたのしい窓』は第2話の上演に先立つ5月21日(木)に再演が予定されている。未見の方は続きを読む前にぜひ再演をご覧いただきたい。

『ちかくに2つのたのしい窓』で描かれるのは宮城県に住む村田秋乃と東京都在住の川岸風太の通話。会話は仕事から帰ってきた旧友同士のそれとして始まるが、やがて風太はパートナーと別れてきたことを秋乃に告げる。どうやら風太と秋乃は想いを寄せ合っているらしい。しかし二人の気持ちが完全に一致するわけではない。秋乃は風太にもっと宮城に帰ってくればいいのにと言うが、秋乃はそんなに気軽に新幹線は使えないと言い返す。問題は距離だけでない。それぞれが置かれている状況の違いはなかなか見えづらく、ときに相手を傷つけてしまうこともある。

[Photo by Masami Ihara]

ロロとしては珍しく、直接にエロティックな場面があったのが印象的だ。ビデオ通話の画面越しに触れ合う二人。風太のスマホは画面がひび割れているらしく、画面に映る秋乃のくちびるにも細かい傷があると風太はそれをなぞる。当然、観客にそのひび割れは見えないのだが、だからこそ観客は風太のなぞる指先を改めて想像する。それを受けて照れてみせる秋乃の想像は観客のそれと重なり合っているだろう。

ところで、秋乃と風太はそれぞれロロのメンバーの亀島一徳と篠崎大悟が演じていて、設定にも二人が男性であることがはっきりと記されている。セックスするかどうかについてのセリフもあるにはあるのだが、二人の関係がどのようなものであるのかがはっきりと語られるわけではない。ロロ/三浦直之はこれまでの作品でも既存の枠組みに捉われない関係の結び方を描いてきた。本作では、単に男性同士のパートナー関係を描くのではなく、二人の人間が結ぶ関係が本来どのようなかたちにでも開かれているということを描いている。秋乃と風太との間で互いへの想いが一致しているかどうかはわからないし、その必要もない。二人の関係はこれからまた変わってもいくだろう。画面越しに触れ合いE.T.の真似をするふたりが何度も繰り返す「ともだち」という言葉はそのたびに違って聞こえる。

自分とは、いまとは違う「普通」を想像すること。それもまた「いまここにないもの」への想像力だ。そこには「いまここ」を未来へと開いていく可能性がある。

[Photo by Masami Ihara]


公式サイト:http://loloweb.jp/
ロロ『窓辺』:https://note.com/llo88oll/n/nb7179ad5e3a5


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