artscapeレビュー

日産アートアワード2020

2020年09月01日号

会期:2020/08/01~2020/09/22

ニッサン パビリオン[神奈川県]

2013年より隔年で行なわれてきた「日産アートアワード」のファイナリストによる新作展。4回めの今回は1年遅れての開催となった。これまでの3回はBankARTが使ってきた日本郵船の海岸通倉庫を会場にしていたが、建物自体が再開発で消滅したため、場所探しに手間どったのかもしれない。今回の会場は、みなとみらいの一画に仮設されたニッサンパビリオン。もともと自動車のショールームとして建てられたらしく、展示は片隅の目立たない場所で行なわれた。

今年のファイナリストは風間サチコ、三原聡一郎、土屋信子、和田永、潘逸舟の5人。1回め8人、2回め7人、3回め5人と徐々に減っているが、日産の業績と関係あるんだろうか。風間は東京オリンピックに合わせて制作した超巨大作品《ディスリンピック2680》をはじめ、風刺を効かせた木版画を出品。三原は床と天井に設置した装置により水の三様態を可視化し、土屋はFRP、ビニールチューブ、金属板などを組み合わせたインスタレーションを見せている。和田は世界の人たちに中古の家電で楽器をつくってもらうプロジェクトを紹介し、潘は床に銀のシートに包まれた大きな消波ブロックを置き、整備員姿の本人が海の波を制止しようとする映像を流している。

いや、みんな悪くはないんだけど、昨年わざわざヴェネツィアで国際審査員が選出したファイナリストがこれかよ……との思いがなくもない。なんか華がないというか、色気がないというか。実際、作品に色味がほとんどないし、見ているうちに暗くなってくる作品が多い。ほかにもっと華々しいアーティストはいなかったんだろうか。強いて華があるといえば、土屋のインスタレーションと風間の木版画くらい。特に風間はモノクロームだけど、うわべだけの華やかさを批判するストレートな絵柄が実に華やか。《ディスリンピック2680》もいいが、原発批判の《PAVILION―白い巨象(もんじゅ)館》と、クルマ社会批判の《PAVILION―地球のおなら館》が秀逸だ。よくニッサンパビリオンで展示させてくれたもんだと感心する。

2020/07/28(火)(村田真)

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