2020年10月15日号
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artscapeレビュー

PGI Summer Show 2020 “Colors”

2020年09月01日号

会期:2020/07/21~2020/08/22

PGI[東京都]

夏休みの時期にギャラリーのコレクションを公開する「PGI Summer Show」は、昨年の「monoとtone」(モノクローム)に続いて、今年は「Colors」(カラー)が企画された。出品作家はハリー・キャラハン、リチャード・ミズラック、ジャン・グルーバー、オリビア・パーカー、エリオット・ポーター、コール・ウェストン、オサム・ジェームズ・ナカガワ、石元泰博、川田喜久治、久保田博二、澤本玲子、圓井義典、濱田祐史の13人に、NASA(アメリカ航空宇宙局)所蔵の宇宙飛行士の写真が1点加わっている。ハリー・キャラハンの1940〜50年代の作品から、濱田祐史の2010年代の近作まで、多彩な作品を楽しむことができた。

カラー作品の歴史が浅いのは、どうしても褪色、変色の問題がつきまとうからである。モノクローム写真と比較して、安定した画像をキープするのがむずかしいので、写真家たちはさまざまなプリント技術を駆使して、カラー写真のクオリティを保とうとしてきた。それでも、リチャード・ミズラックの1980年代の風景写真のように、当時一般的に使われていたChromogenic Print(C-Print)の作品は、かなり褪色が進んでいる。今回の展示では、ハリー・キャラハンやエリオット・ポーターが使用していた、染料系の顔料によるDye Transfer Printは鮮やかな色味を残していた。だが同技法は、手間と費用の問題でいまはほとんど使われなくなっている。デジタル化以降のカラープリントがどの程度の耐久力を持つかは、これからの課題といえる。とはいえ、色、光、空気感をヴィヴィッドに定着できるカラー写真の豊かな表現力は、モノクローム写真では代替えが効かない。プリントの保存を含めた技術的な問題を、早急に解決していく必要があるだろう。

今回の収穫は、澤本玲子(1934〜2006)のカラー作品「東京 西落合」(1980)を見ることができたことだった。澤本玲子は、夫の澤本徳美とともに、長く日本大学芸術学部写真学科で教鞭をとっていた写真家である。PGIでも何度か個展を開催しているが、いまギャラリーに残っているのは本作一点だけだという。自宅の眺めに想を得て制作したシリーズだが、日常の事物に向ける視点が、どこかソール・ライターの作品のような趣がある。もう一度、きちんとふり返ってみるべき価値のある作家といえるだろう。

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