2020年12月01日号
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artscapeレビュー

1930ローマ展開催90年 近代日本画の華~ローマ開催日本美術展覧会を中心に~

2020年09月01日号

会期:2020/08/01~2020/09/27

大倉集古館[東京都]

いまでは毎年のように海外で日本の現代美術展が開かれているが、その嚆矢こうし ともいうべき展覧会が90年前の1930年、ローマで開催された。その名も「日本美術展覧会」。通称「ローマ展」とも呼ばれるこの展覧会は、ムッソリーニ率いるイタリア政府が主催し、横山大観をはじめ日本画家80人による160件以上の作品が出品され、好評を得たという。これを全面支援したのが旧大倉財閥の2代目、大倉喜七郎で、今回はそのうち大倉文化財団が所蔵する作品を中心に25点を展示している。

1930年といえば、満州事変の前年であり、日独伊が三国同盟を結ぶのはまだ10年先のこと。なので、戦争を予感させたり不穏な空気を感じさせる作品はないけれど(今回は出ていないが、前田青邨の《洞窟の頼朝》は一種の戦争画で「ローマ展」に出品された)、ものが日本画で、しかも場所が外国なので、おのずとナショナリズムを高揚させる効果はあったはず。参考資料として出ていたローマでの集合写真を見ると、みんなスーツでキメているのに、横山大観だけが和服姿。空気を読めないのか、読んだうえでの戦闘モードなのか。

展示は「描かれた山景Ⅰ~日本の里山~」「描かれた山景Ⅱ~モノクロームによる~」「美の競演~花卉・女性~」「動物たちの姿~生命の輝き~」の4部構成。出品は大観のほか、橋本雅邦、菱田春草、川合玉堂、伊東深水、鏑木清方、竹内栖鳳ら、日本美術院を中心に官展系の画家がズラリと並ぶ。しかし、大観は型通りの日本画だし(それが大観スタイルなのだが)、玉堂は水墨画に西洋画法を折衷させたキッチュな風景画だし、古典美術の親分ともいうべきイタリア人から見れば屁みたいなもんだが、案外プリミティブなオリエンタリズムとして珍重されたかもしれない。少なくとも当時の日本の「洋画」を見せるより新鮮味はあっただろう。

といいつつ、感心した作品もいくつかあった。ボタニカルアートよろしく虫食い穴まで克明に描いた並木瑞穂の《さやえんどう》は、西洋の古典的な静物画を思わせないでもないし、2羽の闘鶏を描いた竹内栖鳳の《蹴合》は、日本画らしからぬ見事な筆さばきを見せる。この2人は油絵に進まなかったことが惜しまれる。ていうか、油絵に進んでも惜しまれただろうけど。

2020/08/15(土)(村田真)

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