artscapeレビュー

画廊からの発言 新世代への視点2020

2020年09月01日号

会期:2020/07/27~2020/08/08

ギャラリー58+コバヤシ画廊+ギャラリーQ+ギャラリイK+ギャルリー東京ユマニテ+ギャラリーなつか+GALERIE SOL+藍画廊[東京都]

1993年の初回は10画廊が参加し、タイトルも「10画廊からの発言」となっていたが、第10回から11-12軒に増え、第17回で最大の13軒を記録。しかし21回めを迎える今年は8軒に減った。そのうち、初回から参加しているのは4軒のみ。寂しいけど、栄枯盛衰は世の習い。なにより猛暑の真夏に行なわれるから、見るほうとしては少ないほうが身体のためにはいい。

今年は絵画が版画も含めて6人もいた。初期のころは笠原恵実子や高柳恵理や藤浩志ら立体やインスタレーションが多かったので、隔世の感がある。しかも今回、6人中3人が下地を塗って和紙を貼ってその上に描いたり、描いた上に和紙を貼るといった重層的な画面づくりをしている。川名晴郎(ギャラリーなつか)、黒宮菜菜(コバヤシ画廊)、小野木亜美(ギャラリー58)だ。レイヤーとしての効果を得るために和紙を用いたのだろうが、そのため色彩がくすんで日本画のように見える(川名は日本画出身だが、黒宮と小野木は洋画出身)。こういうのがいまどきの流行なのか。

だから逆に、カサハラメイ(ギャルリー東京ユマニテ)のストレートな抽象画が新鮮に映った。その作品は、すべて正方形の画面にどこからか抽出した直線や曲線を引き、3色でフラットに塗り分けるというストイックな方法で制作される。なんか昔どこかで見たことがあるような。その意味で新鮮に映ったというより、懐かしさを覚えたといったほうがいいかもしれない。たとえは悪いが、周回遅れのランナーが一瞬トップに立ったみたいな。

あと2点、今年特筆すべきは、男性作家が2人しかいないことと、外国人が2人もいたこと。同じ2人だが、もちろん前者は少ない、後者は多いという意味で。この傾向はますます拍車がかかり、いずれ外国人の女性作家ばかりになる可能性もある。それはそれで楽しみだ。外国人は、香港出身の雷康寧(ルイ・ホンネイ/ギャラリイK)と、韓国出身の金昭希(キム・ソヒ/ギャラリーQ)。雷は、鳥やヘビや人間などさまざまな生物が混ざり合った妖怪みたいな異形の彫刻を丁寧につくっている。金は、段ボール箱に台所、バスルーム、寝室など日常の場面を収めるように絵に描くほか、マスクをテーマにした版画も出品。2人とも日本の美大で学んだせいか、発想や技巧は日本人とほとんど変わらない。もはや性差や国別で作品は判断できないし、する必要もない。


公式サイト:http://www.galleryq.info/news/news_newgeneration2020.html

2020/08/05(水)(村田真)

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