2020年10月15日号
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建築学生ワークショップ東大寺2020

2020年10月15日号

東大寺 大仏殿 北側[奈良県]

毎年秋の恒例となっている、NPO法人アートアンドアーキテクトフェスタが主催する建築学生ワークショップだが、今年はコロナ禍によって筆者がレクチャーを行なう予定だった説明会がキャンセルされるなど、スケジュールの遅れはあったものの、無事、奈良の東大寺で行なわれた。

これまで伊勢神宮、出雲大社、比叡山の延暦寺、明日香村のキトラ古墳など、名だたる古建築を舞台に開催されてきたが、いよいよ東大寺である。重源が手がけたダイナミックな構造の南大門が残っており、とりわけ建築家にも人気の古建築である。公開の最終講評会に訪れたら、なんと大仏殿の背後に椅子や机が並べられていた(感染予防にも良いだろう)。いつもの講評会は関連施設の会館などが使われていたが、今回は会場が屋外であり、幸い雨も降らず、朝から夕方まで、ずっと目の前の大仏殿を眺めながら、学生の発表を聴くという至福の体験だった。これは忘れがたい講評会になるだろう。実際、このエリアがイヴェントで使われることはほとんどなく、プリツカー賞の授賞式など、特別な機会に限られる。


大仏殿背後の会場


大仏殿前の作品

ワークショップでは、全国から集まった学生が8チームに再編され、東大寺の境内のあちこちに作品がつくられた。大仏殿や鐘楼の正面、宝庫や二月堂の近く、講堂跡などがサイトになっていたが、ぐるっとひとまわり歩くだけでもかなり広範囲である。明らかに例年よりも広く、東大寺のスケールの大きさを感じさせる。


南大門前の木の皮を使った作品


宝庫前の石を用いた作品


二月堂の階段に続く作品

このワークショップは、ただ絵を描いて終わりではなく、学生がプロの協力を得て、実際にリアルな構築物をつくることが醍醐味だ。しかも佐藤淳や腰原幹雄らが講評に参加し、構造や構法のレベルで細かいコメントがなされるのが、ほかのワークショップにはない最大の特徴である。筆者も歴史建築の再訪だけでなく、それを楽しみに毎年参加している。

さて、今年の作品は、東大寺からパワーをもらったせいか、例年より作品の水準が高かった。また石、鹿せんべい、木の皮など、作品に使われた素材もユニークである。めずらしく、音をテーマにした作品もあった。惜しむらくは、重源が採用した大仏様に対する解釈を組み込んだ作品がなかったことだろうか。


鹿せんべいを練りこんだ作品


鐘堂前の音をテーマにした作品


公式サイト:https://ws.aaf.ac/

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