2020年10月15日号
次回11月2日更新予定

artscapeレビュー

ウポポイ(民族共生象徴空間)、国立アイヌ民族博物館

2020年10月15日号

ウポポイ(民族共生象徴空間)、国立アイヌ民族博物館[北海道]

札幌を電車で出発し、途中で久しぶりに苫小牧に寄って、《苫小牧市美術博物館》の「生誕100年|ロボットと芸術~越境するヒューマノイド」展(カレル・チャペックが戯曲『R.U.R』で「ロボット」という言葉を初めて使ったのが1920年だった)を見てから、白老駅で降り、ウポポイ(民族共生象徴空間)を報恩した。ダイレクトに特急で行けば、札幌から1時間ちょっとの距離感である。


《苫小牧市美術博物館》外観

寄り道をしたため、昼過ぎに到着したが、午前中からいるべきだった。なぜなら、屈曲したいざないの回廊を経てから入るエリア内の公園には、体験交流ホール、体験学習館、チセ(家屋)を再現した伝統的コタン(ただし、一部の棟の大きさは、誤解を招くのでは? と疑問に思った)など、いくつかの施設があり、上演や実演など、様々なイヴェントを行なっているからだ。そして笑顔の親切なスタッフもあちこちにいて、テーマパーク的な空間でもある。


ウポポイの体験交流ホール


伝統的コタン

ポロト湖のほとりにある建築とランドスケープは気持ちがいい。久米設計による《国立アイヌ民族博物館》は、風景にあわせて少しうねっており、1階はショップや展示に導入するシアターとし、2階に常設と企画の展示空間を持ち上げている。また2階のパノラミックロビーからは、見事に切りとられた湖と公園の眺めが得られる。


《国立アイヌ民族博物館》


《国立アイヌ民族博物館》からポロト湖を望む

さて、常設の基本展示室は、中心部は円にそってガラスケースの什器を並べ、大きなテーマ群を紹介し、外周はさらに細かい内容を紹介する、こなれた展示のデザインだった。もっとも、この博物館の最大の特徴でもある「アイヌの視点」から紹介する切り口、すなわち「私たち」を主語とする語り口で説明している部分は、目新しさを感じつつも、やはり美術家の小田原のどかが指摘したような疑問を抱かないわけにはいかなかった。


基本展示室の展示風景


チセの建設展示

例えば、アイヌが受けた苦難の歴史は一体誰が行なったものなのか、という点がぼかされている。むろん、こうした問題は、日本における戦争関係の展示施設にも通じるものだ。まるで自然災害のように悲惨な記憶が語られる一方、なぜ戦争が起き、どうしてこのように事態が悪化したのかという責任の主体がいつも曖昧である。また企画の特別展示室は、途中から、ただ書籍を並べたり、映像と団体の紹介だけになっており、オープニングとしてはやや寂しい内容だった。


公式サイト:https://ainu-upopoy.jp/

関連記事

国立アイヌ民族博物館 2020 ──開館を目前に控えて|立石信一:キュレーターズノート(2020年04月15日号)

2020/09/06(日)(五十嵐太郎)

2020年10月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ