2021年04月15日号
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artscapeレビュー

山形の建築と博物館をまわる1(鶴岡市)

2021年04月15日号

[山形県]

一泊二日で山形の建築と博物館をまわった。近年、鶴岡は2つの注目すべき現代建築が登場した。坂茂が設計した《ショウナイホテル・スイデンテラス》(2018)とSANAAほかが手がけた《荘銀タクト鶴岡》(2017)である。前者は、水とホテルが組み合わされており、リゾート風だが、その名の通り、水田をイメージしたのはユニークだろう。彼らしい、システマチックなフレームによる空間である。そして隣接する、やはり坂による児童施設の《KIDS DOME SORAI》は、亀の甲羅のような全天候型の木造ドームが目立つ。



坂茂設計の《ショウナイホテル・スイデンテラス》


これまた坂茂設計の《KIDS DOME SORAI》

一方、《荘銀タクト鶴岡》は、幾重にも屋根が連なる外観が山々の風景とも呼応しながら、場所によって見え方が変わる新しいランドマークだった。客席は非対称のワインヤード席であり、これを包むコンクリートのヴォリュームから、軽やかな鉄の階段や空中歩廊が外周部に展開する。またホールでありながら、いつでも入れるフリーゾーンをもつ開かれた建築だった。なお、イタリア料理で有名なアル・ケッチャーノも鶴岡市内にあるので、このエリアを建築めぐりする場合は、《スイデンテラス》の宿泊とあわせて、そちらで食事をすることを勧めたい。



屋根が特徴的な《荘銀タクト鶴岡》

《荘銀タクト鶴岡》は当初、別の場所での建設も検討されていたらしいが、現在の位置は《鶴岡アートフォーラム》《大寶館》《藤沢周平記念館》《東北公益文科大学》《致道博物館》などに近く、文化系の施設がまとまった領域を形成しつつ、市の中心部に21世紀的な空間が追加されたと位置づけられる。ただし、外でのランチの習慣があまりないせいか、《荘銀タクト鶴岡》のフリーゾーンにカフェがないのが惜しい。

興味深いのは、開業がかなり早く、なんと1950年代にさかのぼる独特の施設である《致道博物館》だ。しかも、いわゆる博物館の建築とはだいぶ違う。ここにはモダニズムの美術展覧会場(1961)もあるのだが、江戸時代の《旧庄内藩主御隠殿》(1863)や《旧渋谷家住宅》(1822)、明治期の擬古典系意匠の《旧西田川郡役所》(1881)や《旧鶴岡警察署庁舎》(1884)などを随時移築し、それらが並ぶ、野外博物館的な場所なのだ。つまり各棟の建築それ自体が、山形の歴史を刻む、大きな展示物である。訪問時は企画展として、雛人形展や礒貝吉紀のドールハウス展(マッキントッシュのインテリアもいくつか含む)が開催されていた。



《旧庄内藩主御隠殿》の室内


《旧渋谷家住宅》外観


《旧西田川郡役所》(1881)


《旧鶴岡警察署庁舎》外観

2021/03/17(日)(五十嵐太郎)

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