2021年10月15日号
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artscapeレビュー

MR.BRAINWASH EXHIBITION 「LIFE IS BEAUTIFUL」

2021年04月15日号

会期:2021/02/27~2021/03/15

PARCO MUSEUM TOKYO[東京都]

これは愉快。アート関係者ならバカウケするか、腹を立てるかのどちらかだろう。ぼくはもちろん喜んでしまった。ミスター・ブレインウォッシュとは、バンクシーの映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』の主人公で、もともと本人(ティエリー・グウェッタ)は趣味のヴィデオでグラフィティアーティストの追っかけをしていたのだが、バンクシーとの出会いをきっかけに自分でグラフィティを始めることになり、ブレインウォッシュ(洗脳?)という名の売れっ子アーティストになってしまった(仕立て上げられた?)人物。つまりミイラ捕りがミイラになったというウソみたいな話で、それをバンクシーが映画化したってわけ。この映画、どこまでがリアルでどこからヤラセなのか判断がつきかねるが、こうして本当に展覧会を開くくらいだから、ミスター・ブレインウォッシュが実在することは確かだろう。もっともアート業界全体がある意味ヤラセみたいなもんだけどね。

作品そのものもまさにヤラセというか、どのようにつくればスノッブなアートピープルにウケる(売れる)か計算したうえで制作しているのがわかる。現代アートでウケる要素というと、アーティストでいえばポロック、ウォーホル、ジェフ・クーンズ、バンクシーら、手法でいえばドリッピングの飛沫や滴り、シルクスクリーン、ステンシルなど、アイコンでいえばマリリン・モンロー、エルヴィス・プレスリー、アメリカンコミックのヒーローたち。これらを組み合わせ、織り混ぜて次々と「売り絵」を量産していく。たとえば、額縁入りの複製絵画にバスキアやバンクシーの絵を描き加えたり、マリリンの顔をレコードの破片で構成したり、落書きだらけの画面の上にネオンで「life is beautiful」と書いたり。基本的にはバンクシーの路線上に乗っているが、バンクシーとの違いは「ライフ・イズ・ビューティフル」というコピーに象徴されるように、呆れるほど楽天的なこと。それだけに飽きられるのも早いだろうし、時代の徒花であることは間違いない。それにしてもここまで恥ずかしげもなく媚び、パクリ、売り込む姿勢には、呆れを通り越して畏敬の念さえ抱く。もはやあっぱれ!

2021/03/10(水)(村田真)

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