artscapeレビュー

島村恵美写真展「ねこがいる」

2021年04月15日号

会期:2021/03/18~2021/03/29

オリンパスギャラリー東京[東京都]

ねこの写真。当たり前だが、興味ある人には興味あるけど、興味ない人には興味ないだろうね。ぼくは興味ないけど、事情があって行ってみたらおもしろかった。だって、「ねこがいる」という写真展なのに風景写真ばかりで、肝心のねこが見当たらにゃいんだもん。なかには風景のど真ん中にねこが鎮座している写真もあるが、大半の写真にはねこが見つからない。どこに「ねこがいる」と訝りながらよく見ると、画面の端っこに小さく写っていたりする。木陰に隠れていたり、軒先から顔だけ出していたり、ビニールシート越しにこちらを見ていたり、箱の中で昼寝していたり、完全に風景に溶け込んでいる。A3伸(312×439mm)のゴチャゴチャした雑踏の写真に、わずか1センチ足らずの大きさで紛れているのだから、本気で探さなければ見つからない。こうなると作者の術中にはまったも同然、1点1点、画面を隅から隅まで見ていくことになる。またそれだけの凝視に耐える「風景写真」でもあるのだ。

難点は、クイズと同じで、いちど発見したら「ゲームオーバー」、2度と見ないこと。と思ったら、よくよく見るともう1匹見つかったりする。なんだ2匹いたのか、と思ったら3匹も4匹も見つかったりするから油断ならない。二度見三度見必至、こうして画面を隈なく鑑賞せざるをえなくなるのだ。別にねこだけでなく犬にも人にも飛行機にも応用できそうだが、やっぱりなんにでも化ける変幻自在なねこがいちばんだにゃん。

2021/03/28(日)(村田真)

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