artscapeレビュー
「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」展ほか
2022年02月15日号
[愛知]
1月は集客が難しく、通常は展示の閑散期だと思うが(やはり芸術は秋なのだろう)、なぜかアートが熱い名古屋に足を運んだ。名古屋市美術館の「現代美術のポジション 2021-2022」展は、地域にゆかりのある作家を紹介するシリーズ企画だが、やはり愛知県ならではというか、絵画系が充実している。作風がさらに進化している水野里奈、絵の具でモノがつくられる多田圭佑、横野明日香の動きのある風景画、犬をモチーフに独自の世界観を表現できる川角岳大らの作品が興味深い。
水野の絵画は、愛知県美術館の常設の新収蔵作品展にも入っていたが、同館の企画展「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」は、カール・アンドレやソル・ルウィットなど、著名な作家が多く、おさらい的な内容かと思いきや、まったくそうではなかった。サブタイトルに示されたように、1967年、デュッセルドルフにフィッシャー夫妻が創設した小さなギャラリーを核に据えることで、いかに新しい概念の作品群が空間や環境を意識したか、また手紙を通じた作品制作の過程を紹介している。前者は会場にギャラリーを再現していたが、場所の使い方として建築系の人間にも興味深い切り口であり、後者のインストラクションは現在のコロナ禍におけるリモート設営と重ねて考えたくなるテーマだろう。
さて、同館が入る愛知芸術文化センターでは、「ARTS CHALLENGE 2022」も開催されていた。これまでの公募と違い、今回はあいち2022と連動する明快なテーマとして「I Got Up 生きなおす空間」を設定しており、作品の統一感が認められる。佐野魁のコンクリート絵画、篠藤碧空が動かす巨大な円柱、三枝愛が畑の道に介入した記録と記憶、展望回廊における小栢可愛の葉書と小窓の組み合わせなどが印象に残った。「ARTS CHALLENGE(アーツ・チャレンジ)」に選ばれた作家は、その後のあいちトリエンナーレにしばしば参加しているが、今回は誰になるのだろうか。なお、10階のフォーラムに設営されていた木村友紀の作品は、なぜここに? と思ったのだが、アーツ・チャレンジではなく、コレクション展の一部だった。
イレギュラーだったのが、東京の国立新美術館でよく見ていた文化庁新進芸術家海外研修制度の成果発表展も愛知芸術文化センターで開催されていたこと。今回は日本各地で行なわれており、ここでは「DOMANI plus」@愛知 まなざしのありか」として大塚泰子による水や青に触発された作品と、冨井大裕による斜めの彫刻を展示していた。関係者によると、こうした試みは大変だが、地方のアート関係者に喜ばれているという。なお、名古屋の港まちポットラックビルも会場に選ばれていたが、未見である。
現代美術のポジション 2021-2022
会期:2021年12月11日(土)〜2022年2月6日(日)
会場:名古屋市美術館
(愛知県名古屋市中区栄2-17-25)
令和3年度新収蔵作品展
会期:2022年1月22日(土)〜2022年3月13日(日)
会場:愛知県美術館
(愛知県名古屋市東区東桜1-13-2 愛知芸術文化センター10F)
ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術
会期:2022年1月22日(土)〜2022年3月13日(日)
会場:愛知県美術館
ARTS CHALLENGE 2022
会期:2022年1月22日(土)〜2022年2月6日(日)
会場:愛知芸術文化センター
(愛知県名古屋市東区東桜1-13-2)
「DOMANI plus @愛知 まなざしのありか」
会期:2022年1月18日(火)〜2022年1月23日(日)愛知芸術文化センター会場
2022年1月18日(火)〜2022年3月12日(土)港まち会場(港まちポットラックビル、旧・名古屋税関港寮)
2022/01/23(日)(五十嵐太郎)