artscapeレビュー
「❒³LE(キュービクル):最低限のシェルター空間国際設計コンペ」ほか
2022年02月15日号
[宮城]
ちょうど仙台において、東北大学の五十嵐研が関係する展示が三つ同時に開催されていた。ひとつはせんだいメディアテークの「くまもとアートポリス巡回展─みんなの家、後世へつなぐ復興─」展である。これは昨年12月に熊本市現代美術館で見た展示の巡回展で3.11と熊本の災害後の活動を紹介する企画だ。最初のセクションにおいて、さまざまな建築家から寄せられたみんなの家のイメージがあり、そのなかに芳賀沼整の依頼を受けて、五十嵐研が南相馬の仮設住宅地で設計した塔がある集会所のドローイングも含まれている。実現したものは有限の塔だが、ここでは無限バージョンを提出した。なお、熊本のみんなの家は、当初の役割を終えた後、移転合築がなされ、集会所などに転用されている事例が少なくない。また熊本地震震災ミュージアムのコンペの最優秀案となった、o+h・産紘設計Jvなども紹介しており、次世代を担う建築家の活躍が期待される。
定禅寺通り沿いの東京エレクトロンホール宮城では、「宮城県芸術選奨受賞者作品展~みやぎ芸術銀河作品展~」に菊池聡太朗が出品していた。彼は志賀理江子のアシスタントをつとめたことがきっかけで、アーティストとしての活動を開始した研究室のOBである。そしてギャラリースペースがつくられた仙台フォーラスの7階では、やはりOBの吉川彰布が企画した国際コンペの結果を展示していた。彼は前述した塔がある集会所などを契機に、アーキテクチャー・フォー・ヒューマニティをサポートし、この組織が消滅した後は、防災と復興支援を行なう一般社団法人ヒトレン(AHA)を自ら立ち上げ、3.11から10年という節目に避難所を想定した「❒³LE(キュービクル):最低限のシェルター空間国際設計コンペ」を企画したのである。その結果、世界53ヶ国から114案が集まり、最終審査にのぞむ優秀8作品は、1/1の実物(2m角のキューブにおさまるヴォリュームが規定)によって制作・展示していた。てっきり会場はパネル展示のみだと思っていたので、木材や段ボールなどを使った力作のキューブが並ぶ風景は、なかなか見ごたえがある(佳作などは、パネル展示)。審査は、アストリッド・クラインや東北大学災害科学国際研究所のリズ・マリーらが担当し、最優秀賞には畠和宏らによる「ふだん木のまち」が選ばれた。
せんだいメディアテーク「みんなの家、後世へつなぐ復興」
会期:2022年1月24日(月)〜2022年1月26日(水)
会場:せんだいメディアテーク
(宮城県仙台市青葉区春日町2-1)
宮城県芸術選奨受賞者作品展
会期:2022年1月24日(月)〜2022年1月30日(日)
会場:東京エレクトロンホール宮城
(宮城県仙台市青葉区国分町3-3-7)
「❒³LE(キュービクル):最低限のシェルター空間国際設計コンペ」
会期:2022年1月15日(土)〜2022年1月27日(木)
会場:仙台フォーラス7階 even
2022/01/26(水)(五十嵐太郎)