artscapeレビュー

小松一平《G町の立体廻廊》、銀閣寺ほか

2022年02月15日号

[京都]

京都において、奈良を拠点とする小松一平が設計した《G町の立体廻廊》(2020)を見学した。これは築100年の大きな邸宅のリノベーションであり、直前まではアパートとして使われ、部屋が小割りになっていたのに対し、2階の床を抜いて、吹き抜けをつくり、1階レベルを多世帯家族のための共同の広いダイニング・キッチンのスペースに変えている。興味深いのは、1.5階レベルの裏庭から屋根の上にスチールパイプのブリッジを架け、2階の開口(あえてドアではなく、窓のようなデザイン)にアクセスし、そのままぐるりと吹き抜けのまわりを回転しながら、1階に降りていく動線を付加したこと。すなわち、木造の家屋に鉄の通路を貫通させることで、隣接しつつも、急な段差があるためにアクセスしづらかった裏庭とつなぎ、新しい動きをもたらしている。大胆なデザインだが、道路側のファサードは変化していない。以前、U-30の建築展において彼の作品を見たとき、擁壁を崩して建築化するプロジェクトが印象的だったが、ここでも高さの調整が主題になっている。小松による《あやめ池の家》(2015)でも、擁壁を操作しつつ、周辺環境との応答を試みた。



《G町の立体廻廊》



《G町の立体廻廊》


たまたま、この住宅の近くに銀閣寺があったので、10年以上ぶりに立ち寄った。肝心の二つの建物(《観音殿》と《東求堂》)の内部に入れないだけに、むしろくねくねと歩きながら、丘を登る広い境内を散策し、あちこちから眺めることで、日本建築にとっての庭の重要性をあらためて感じる。また以前はなかったと思う《観音殿》の色彩復元のモックアップ展示があり、やはり昔はカラフルで、いまの渋い、日本的な(?)感じとだいぶ違うのは興味深い。続いて南下し、庭と襖絵が有名でさまざまな天井の形式をもつ方丈の部屋のある《南禅寺》を訪れた。すぐ横にある明治期につくられたアーチが連なる《水路閣》(ローマの水道橋と同じ働きをする組積造)がカッコいい。禅宗の古建築と当時の最新土木インフラの対比は、首都高と日本橋より強烈かもしれない。それぞれの特性をさらに引き立てる異なる時代の共存、もしくは衝突は、《G町の立体廻廊》における木造家屋とスチールパイプの動線が想起される。



散策路から眺める銀閣寺


室町時代の銀閣彩色の再現



南禅寺



水路閣



水路閣


2022/01/24(月)(五十嵐太郎)

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