artscapeレビュー
六本木クロッシング2022展:往来オーライ!
2023年02月01日号
会期:2022/12/01~2023/03/26
森美術館[東京都]
日本のアートシーンの現在を見せる3年に一度の「六本木クロッシング」。7回目のテーマ(というよりサブタイトル)は「往来オーライ!」というダジャレなもの。かれこれ3年にも及ぶコロナ禍によって内外の交流が途絶え、創造活動もズタズタに分断されてしまったアートシーンにおいて、ポストコロナを見据えて人々の往来を再び取り戻そうとの意図があるようだ。もともと「創造活動の交差点」を目指す「六本木クロッシング」であってみれば、そこにさらなる往来を注ぎ込むことで六本木交差点以上の賑やかな祝祭的空間が現出するんじゃないか、と勝手に期待したが、幸か不幸かそんなことはなかった。
出品アーティストは22組。O JUNや石垣克子らの絵画、石内都や金川晋吾らの写真、青木野枝やAKI INOMATAらの彫刻、潘逸舟やキュンチョメらの映像といったように割と明快にメディアが分かれ、インスタレーションやミクストメディアは意外と少ない。しかも絵画は壁に、彫刻は床に、映像はブースに展示されるなどきちんとテリトリーが分かれ、作品同士が干渉することなくおとなしく収まっている。いやもちろんそのほうが見やすくていいのだが、展覧会全体としてはよくも悪くも「交通整理」されていて、スクランブル交差点みたいな賑わいは感じられない。もっと作家同士、作品相互の交差・往来があってもよかったのではないか。
そんななかでも、松田修、池田宏、キュンチョメらの作品が並ぶ横丁は少し吹きだまり感があって不穏な空気を漂わせていた。でもアイヌやトランスジェンダーを主題にした作品は見て楽しめるものではない(もちろん楽しけりゃいいってもんでもないが)。いちばんワクワクしたのは、やんツーから竹内公太を抜けてSIDE COREに至る並びだ。やんツーは、自律搬送ロボットが棚に並ぶ石膏像や工芸品、仏像、石ころなどからひとつを選んで運び、また戻しては別のひとつを運び……を繰り返すシジフォス的なインスタレーションを公開。竹内はランプ付きの警棒を振り回してアルファベットを描き、光跡写真に撮ってオリジナルフォントを制作。SIDE CORE/EVERYDAY HOLIDAY SQUADは、夜間工事用の照明器具を組み合わせたインスタレーションと、作業着を着たスケーターが東京を滑走する映像を出品。ストリート感あふれるコーナーになっていた。
公式サイト:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2022/index.html
2022/12/01(木)(村田真)