artscapeレビュー
レオナルド・ダ・ヴィンチめぐり
2023年06月01日号
[イタリア、ミラノ・フィレンツエ近郊]
今回のイタリア滞在では、自動車を使い、ミラノとフィレンツエの近郊にあるレオナルド・ダ・ヴェンチゆかりの地をまわった。まずミラノ近郊のヴィジェーヴァノの《スフォルツェスコ城》へ。新しい施設の「レオナルディアーナ」は、現代的なディスプレイによる複製品・模型のみで構成しつつ、絵画から都市計画まで、レオナルドの幅広い仕事を紹介する。ほかに《ブラマンテの塔》や、スケッチに描かれた厩など、ダ・ヴィンチに関連する施設を見学した。ちなみに、ヴィジェーヴァノは、中世的な街並みに挿入された近世的な広場のデザインが有名である。
続いて、彼が滞在し、大学で解剖を見学したというパヴィーアを訪れた。ミラノから約30kmの地方都市である。ここではダ・ヴィンチ広場(ドゥカーレ広場)の三つの塔を見学した。またブラマンテやダ・ヴィンチが関わったというドゥオモ(街のランドマークとなる教会堂)が存在する。その堂内に入ると、かなり巨大なドームをもち、集中式を追求するまさにルネサンス的なプランだった。イタリアは、かもしれないというレベルで、ダ・ヴィンチの痕跡があちこちに散らばる。
フィレンツェから約1時間のヴィンチ村は、彼の名前が「ヴィンチ村のレオナルド」を意味するように、出生の地である。小さな村だが、各種の複製や模型を活用し、透視図などさまざまな切り口で紹介する展示施設、博物館、ライブラリー、レオナルドの仕事に着想を得た現在のオブジェやアートを分散させ、これらをめぐると、村を周遊できるという仕掛けだ。もっとも、模型などの展示は、ミラノのレオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館が充実しており、あまり新しい発見はなかったが、彼が生まれ育った場所には大きな意味がある。なぜなら、生誕500周年を記念して修復されたレオナルドの生家が残っているからだ。ここでは20世紀半ばに行なわれた修復や記念事業の映像も流している。個人的に印象的だったのは、石造の部屋の窓や近くの建築から眺める田舎と山の風景だった。大都市と違い、ほとんど人工的な構築物がないので、おそらく昔と比べても、それほど劇的に変わっていないと思われる。実際、ダ・ヴィンチの絵画の背景に描かれた風景を想起させるだろう。
2023/03/18(土)、20(月)(五十嵐太郎)