artscapeレビュー

台湾のリノベーション事情

2023年06月01日号

[台湾]

台湾を訪れるたびに新しいリノベーションに出会う。台南では、《林百貨店》(1932)の再活用は有名だが、藤本壮介が8階建ての古いビルを改造し、2022年にオープンした《南埕衖事》には驚かされた。なにしろ、カフェなのに、入場券を購入する行列が生まれていた。そしてビルに入ると、フロアをスケルトン化し、迷宮のような階段が展開されている。ここが人気のフォトスポットだった。前橋の《白井屋ホテル》のリノベーションでも、ピラネージを想起させる階段はあったが、それよりもさらに複雑である。カフェの面積を削ってしまうくらい、必要以上に大きな階段のスペースだが、だからこそ思い切りの良さが新しい名所を生み出したのだろう。


《南埕衖事》


新北市立図書館に隣接するエコロジカル・パークを散策すると、生態系のランドスケープに混ざって、橋の向こうに二つの近代建築をスケルトン化しつつ、廃墟のような点景として残されたものがあった。これは特に用途は定められておらず、内部にも入れないが、明らかに鉄骨で補強しているので、意図的に保存したようだ。今後、活用されるかもしれない。


新北市のエコロジカル・パーク


台北では、台北101のすぐ近くにある四四南村を訪れた。日本統治時代にさかのぼる古い建築群をリノベーションしたエリアだが、いま見ると、こぢんまりとしてスケール感がかわいい。また店舗のセンスやインテリアも優れている。隣接するランドスケープは散りばめられた家型を表現し、既存建築に合わせていた。また宜蘭を拠点に活躍するフィールド・オフィス・アーキテクツと7人のアーティスト(映像、ダンス、彫刻など)のコラボレーション展「超出建築 beyond architecture」を開催していた台北当代芸術館を訪問したことで、同館の東側に《中山蔵芸所》が保存されていたことに気づいた。いずれも日本統治時代の建築である。


ランドスケープから四四南村を見る


「超出建築」展


《中山蔵芸所》


国立台湾博物館の2020年にオープンした「鉄道部パーク」は、森山松之助が設計した《交通局庁舎》や《八角楼》(トイレ)などをリノベーションした施設だった。敷地内に円錐形の防空壕もあり、台湾の鉄道史(駅、ホテル、橋、トンネルなど、建築土木の内容も多い)、建物の保存活動を紹介する展示がよく工夫されている。


鉄道部パーク


鉄道工場跡地の《台北機廠》(1935)のリノベーションも進行中であり、おそらく、日本以上に台湾は、かつて日本が建設した近代遺産の活用に積極的である。ここは博物館が予定されているらしい。都心の空軍総司令部跡地は、C-LAB(文化やイノベーションの拠点)+公園にリノベーションされると聞いて、足を運んだが、まだ工事中のエリアが多く、施設全体の本格的な稼働はこれからだった。銃眼を備え、トーチカに転用可能な門、防空施設の遺跡などが文化財として残る。


空軍総司令部跡地

2023/04/03(月)、06(木)(五十嵐太郎)

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