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光州デザイン・ビエンナーレのフォリー

2023年06月01日号

[韓国、光州]

光州ビエンナーレはアジアでいち早く始まった現代アートの国際展として有名だが、同市では「光州デザイン・ビエンナーレ」も開催されており、2011年の第4回からアーバン・フォリー・プロジェクトを推進していることはあまり知られていない。公式ホームページによれば、韓国の建築家、承孝相とアイ・ウェイウェイのディレクションのもと、国内外の建築家やアーティストが参加し、2020年まで、4期にわたって街中に小さなフォリーが数多くつくられている。これらはてっきりイベントに合わせた仮設構築物だと思っていたが、筆者が街の中心部を歩いてまわった15カ所については、2023年のいまもすべて現存していた。したがってこれらは、期間限定のインスタレーションではなく、耐久性をもつパブリックアート、もしくはまさに建築だと考えた方がいいだろう。ただし、トイレなどの機能はなく、基本的に実用性は求められていないようだ。日本でも越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭に関連して、田園風景の中に小規模な建築がつくられているが、繁華街を含む、都市の中心部にこうしたフォリー群が出現しているのは興味深い。

さて、5・18光州民主化運動の舞台となった錦南路の周辺に集中するフォリーを見学したが、ドミニク・ペローアレハンドロ・ザエラポロピーター・アイゼンマンMVRDV塚本由晴レム・コールハースなど、有名な建築家が参加している。これらは壁、階段、屋根、ゲートなど、建築の全体というよりは、その部位をモチーフにしたものが多く、うっかり見過ごしそうなケースもあった(作品に近づくと、コンセプトを説明するプレートは設置されている)。


ドミニク・ペロー《The Open Box》


アレハンドロ・ザエラポロ《Flow Control》


ピーター・アイゼンマン《99 KAN》


ウィニー・マース、MVRDV《THE I LOVE STREET》


フランシスコ・サニン《Public Room》


個人的に気に入ったのは、奥の細長いカフェとの相乗効果を生み出す、スペインの建築家ファン・ヘレロスによる小さな広場、《コミュニケーション・ハット》である。また韓国の建築家、キム・チャンジュンらの《光のパサージュ》は、商店街のビルとビルの間のわずかな隙間に挿入され、驚かされた。今回は交通アクセスが良くなかったのと、時間の都合で外したが、ロンドンのデザイン・ミュージアムの展示で見たデヴィッド・アジャイによる読書室のフォリーは、次回ぜひ訪れたい。


ファン・ヘレロス《Communication Hut》


キム・チャンジュン、ジン・シヨン《LIGHT PASSAGE》


デヴィッド・アジャイ《Gwangju River Reading Room》模型(ロンドンのデザイン・ミュージアムでの展示「David Adjaye: Making Memory」[2019]より)



Gwangju Folly:https://gwangjufolly.org/

2023/05/03(水)、04(木)(五十嵐太郎)

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