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王大閎の自邸と台北市立美術館

2023年06月01日号

[台湾、台北]

台北市立美術館の南側の公園に再現され、2018年から公開された王大閎の自邸(1953)を見学した。彼は欧米で建築を学び、《国父紀念館》(1972)を設計した、台湾におけるモダニズムの父というべき建築家である。彼のドローイングも、台湾の建築アーカイブ事業において重視されていた。王が台湾に戻って初の作品となった自邸は、いわゆる豪邸ではなく、決して大きくはない。モダニズムをベースに、レンガの壁によるシンプルな空間構成によってコンパクトにまとめている。が、そこに赤色、円窓、庭を加えることによって、東洋のアイデンティを表現する。屋根が激しく沿った国父紀念館はクセが強い造形だが、こんな素直な建築もできることに感心した。また向かいの《DHカフェ》でも王の図面や関連書籍を展示しており、居心地がいい開放的な現代建築である。


王大閎の自邸(原貌重建)


王大閎の自邸(原貌重建)


国父紀念館の図面(新北市立図書館総館で開催されていた「台湾戦後経典手絵施工図建築展」[2023]より)


DHカフェ(王大閎書軒)


美術館では、いくつかの企画展が開催されていた。マグナムフォトの写真家の仕事を回顧する「ルネ・ブッリ」展は、チェ・ゲバラ、中国、TV、コラージュなどの切り口で紹介している。一応、ル・コルビュジエやルイス・バラガンの建築、オスカー・ニーマイヤーによるブラジリアの写真も含まれていたが、個人的にはきちんと建築のトピックを立ててほしかった。いわゆる建築写真とは違い、彼は人間が入った生き生きとした写真を撮影しているからである。なお、今回の展示によって、彼が自らスケッチも描く絵心をもっていたことを初めて知った。


ルネ・ブッリ展


「スーパーナチュラル」展は、遺伝子操作、AI、技術革新、アーティスト4.0の時代におけるポストヒューマンの身体やハイパーリアルな表現をテーマにしたものだった。もっとも、いまだにパトリシア・ピッチニーニの精巧な作品が一番目立つのは、2023年としてはアップデート感が足りないかもしれない。

ほかに「ヘテロジニアス」のインスタレーション、1階は高重黎の音響映像メディア史と身体を扱う個展ダヴィッド・クレルボによる見る人を不安にさせる静止画風の巨大な映像作品、地下はBODO展や「Telling a Story with You」展など、もりだくさんである。これらを全部見ても、入場料が30元(約130円)は安い。



パトリシア・ピッチニーニの作品(スーパーナチュナル展より)


高重黎個展



勒內.布里:視覺爆炸(ルネ・ブッリ展)

会期:2023年3月18日(土)〜6月18日(日)
会場:台北市立美術館(10461臺北市中山區中山北路三段181號)

未來身體:超自然雕塑(スーパーナチュラル展)

会期:2023年2月18日(土)〜6月4日(日)
会場:台北市立美術館(10461臺北市中山區中山北路三段181號)

2023/04/07(金)(五十嵐太郎)

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