artscapeレビュー

ラグジュアリー:ファッションの欲望

2009年05月01日号

会期:2009/04/11~2009/05/24

京都国立近代美術館[京都府]

「ラグジュアリー」を切り口に服飾史をたどるとともに、ラグジュアリー観の変遷をも考察する。端的に言うと、物質的ラグジュアリーから精神的ラグジュアリーへと価値観が抽象化していく過程を見せていた。展覧会の後半は川久保玲とメゾン・マルタン・マルジェラに割かれていたが、両者が服飾史において特別な地位を占めるのか、それともキュレーターの強い思い入れによるものかは、ファッションに疎い私には分からない。折からの不況時にラグジュアリー(贅沢)と銘打つのはいかにもKYだが、企画自体は約3年前から進められてきたものであり、その点は不運であった。「むしろこういう時期だからこそ前向きに」というキュレーターの言葉(記者発表時)は、後付けの理屈だが正しいと思う。

2009/04/10(金)(小吹隆文)

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