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VOCA展2009 現代美術の展望─新しい平面の作家たち

2009年05月01日号

会期:2009/03/15~2009/03/30

上野の森美術館[東京都]

40歳以下の平面の作家を対象とするVOCA展。選考委員は、毎年のように絵画の「貧困」「不作」「窮状」を嘆いてきたが、今回はVOCA賞の三瀬夏之介をはじめ、樫木知子、竹村京、高木こずえなど、新進気鋭の平面作家たちがそれぞれ力作を見せて、見応えがあったように思う。とりわけ、すばらしかったのが、淺井裕介と田中幹。淺井は、従来の「マスキング・プラント」のほかに、紙ナプキン(!)に描いた絵を発表していたが、まるでファミレスで描いたような素振りが、狭いアトリエで鬱屈としている平面作家たちには見られない、健やかなリアリティを感じさせた。「0」(ゼロ)のスタンプを無数に打ちつけた田中幹の絵は、平面の中に無限の宇宙空間を感じさせるという意味ではありがちといえるが、その一方で反復と増殖によって前面化させた0の物質性が、なにをやっても0に帰してしまう暗い虚無感を軽々と乗り越えるほど、すばらしく際立っていた。虚無を虚無のまま描くのではなく、それを前提にしていかに描写するのか、そのありうる解答のひとつを提示していたように思う。

2009/03/29(日)(福住廉)

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