artscapeレビュー
タノタイガ個展 T+ANONYMOUS
2009年05月01日号
会期:2009/03/07~2009/03/29
現代美術製作所[東京都]
アーティストのタノタイガによる個展。風俗嬢に扮したセルフポートレイトのシリーズや、本人のデスマスクを陳列したインスタレーション、木彫りでヴィトンのバッグをつくり、そのフェイクを肩に掛けながらパリのヴィトン本店に潜入する映像作品などを発表した。一見すると、リアルとフェイクの境界を行き来しながら、アイデンティティのありかを模索しているように見えるが、しかし、展覧会のタイトルに暗示されているように、おそらくタノタイガが実践しているのは、唯一無比の存在証明を達成するための「自分探し」などではなく、自分なんてどこの誰でもありうるというニヒリズムの徹底ではないだろうか。だからこそ、ヴィトンのフェイクにもなれるし、風俗嬢にだってなりうるのだし、そうしたある種の柔軟性が生きやすさのヒントであるような気がした。
2009/03/27(金)(福住廉)