artscapeレビュー

世界の短編映画ドキュメンタリー編

2009年05月01日号

会期:2009/03/24

UPLINK FACTORY[東京都]

世界の短編ドキュメンタリー4本を公開する上映会。Jan Zabell監督による《滴が何を知る?》のほか、Tinatin Gurchiani監督《女性の肖像》、André Hörmann監督《カルカッタが呼んでいる》、東谷麗奈監督《Shall We Sing?》が続けて上映された。全体を一貫していたのは地球を丸ごと覆い尽くしつつある現在のグローバリズムのありよう。《Shall We Sing?》はニューヨークに駐在する日本人ビジネスマンを中心に結成された男声合唱団の活動を、《カルカッタが呼んでいる》は文字どおりカルカッタから英米豪各国の家庭に営業をかける電話オペレーターの青年の暮らしをそれぞれ伝える映像だ。テヘランの駅でさまざまな世代の女性たちに幸せを問う街頭インタビューを繰り返した《女性の肖像》を見ると、社会制度はもちろん人びとの精神に隅々まで神の存在が根づいていることがわかる一方で、西洋的な進歩思想が十分に受け入れられていることにも気づかされる。《滴が何を知る?》のシャープな映像は、ベルリンの国会議事堂で働く清掃員たちの労働を描き出していたが、西欧的な民主主義の殿堂をピカピカに光り輝かせるために延々と繰り返される単純労働こそ、現在のグローバリズムの典型的な現われだと思った。

2009/03/24(火)(福住廉)

2009年05月01日号の
artscapeレビュー