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すみだ川アートプロジェクト「遠藤一郎:隅田川いまみらい郷土資料館」

2010年09月01日号

会期:2010/06/25~2010/07/25

すみだリバーサイドホール・ギャラリー[東京都]

「すみだ川アートプロジェクト」とは、東京の下町を貫く隅田川を、たんなる自然環境としてではなく文化資源としてとらえなおそうとするアートプロジェクト。昨年からはじまり、今後80年間を見通した長期的かつ継続的なプロジェクトとして構想されているという。今回は未来美術家・遠藤一郎を中心としたグループが、隅田川の河口から源流の甲武信岳まで173kmの川沿いを調査した結果、河原に廃棄されたゴミを再構成したオブジェや河の水であぶり出した絵、流域で暮らす人びとへのインタビュー映像などを発表した。長大な旅の過程を体感させるには十分な内容といえるが、その一方でなんとも言えないもどかしさを覚えたのも事実だ。つまり、プロジェクトの内容も発表された作品も、いずれも想定範囲内のことばかりであり、こちらの虚を突くような突き抜けたアクションは見られなかった。正直にいえば、昨年のWahによる「すみだ川のおもしろい」のほうが、非常識きわまるアイディアを徹底して追究するバカバカしさにおいて、端的におもしろかった。そもそも隅田川とは荒川から分岐して東京湾に注ぐ河川であるから、正確にいえば、甲武信岳は荒川の水源である。それを承知のうえで隅田川の全長を173kmとするのであれば、その(よい意味での)「図々しさ」をもっと突き詰め、膨らませることができたのではないだろうか。大昔に甲武信岳の水源まで登攀したことのある身としては、山登りや探検、フィールドワークを方法としたアートに好感をもつのは事実だとしても、それだけではそうしたアウトドアの魅力には到底かなわいないと言わざるをえない。

2010/07/21(水)(福住廉)

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