artscapeレビュー

石川真生 写真展

2010年09月01日号

会期:2010/07/23~2010/08/21

TOKIO OUT of PLACE[東京都]

沖縄の写真家・石川真生の写真展。携帯で撮影した『セルフ・ポートレイト─携帯日記─』と、あらゆる人びとに日の丸で自己表現をしてもらう『日の丸を視る目』、2つのシリーズから新作が発表された(また渋谷のZEN FOTO GALLERYでも、ほぼ同時期に『Life in Philly』と『熱き日々 in キャンプハンセン』による写真展が開催)。この2つのシリーズには、後者の石川が撮影者に徹しているのに対して前者の石川が被写体にもなるという違いがあるが、双方に共通しているのはともに人間を丸ごとさらけ出すという写真の暴力性を最大限に発揮しているという点だ。とくに日の丸について考えたことはなくても、石川の写真は自己と日の丸の関係性を明らかにするように迫ってくるし、術後の身体を包み隠さず披露しているように、そのような暴力性を自らにも差し向けるところに、石川真生ならではの倫理がある。それは、写真というメディアがはらむ大衆性がかつてないほどの拡がりを見せている今日、写真家という特権性を自己否定する身ぶりであるばかりか、私たちがつい忘れがちな「写真を撮る」という表現行為の楽しさと恐ろしさを、全身で教えようとする態度の現われのように感じられた。だからこそ、『日の丸を見る目』で被写体となっている人びとの多くが、左右を問わず、思想的に偏っているように見受けられたのが気になった。このシリーズの醍醐味は、携帯で自分を撮ることはあっても、日の丸などには見向きもしないような、市井の人びとが、なかば暴力的に日の丸と自己の関係性を問い直させられた結果、どのような表現が立ち現れるのか、その点に尽きると思うからだ。携帯の世俗性と日の丸の象徴性が重なり合うとき、石川真生はかつてない達成を遂げるのではないか。

2010/08/04(水)(福住廉)

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