2019年07月15日号
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artscapeレビュー

イノセンス─いのちに向き合うアート─

2010年09月01日号

会期:2010/07/17~2010/09/20

栃木県立美術館[栃木県]

ハンディキャップをもつ人や独学のアーティスト、あるいは障がいをもつ人のアートに関わるアーティスト、さらには生命に向き合うアーティストなどを区別することなく勢ぞろいさせた企画展。草間彌生や奈良美智、田島征三、イケムラレイコなど著名なアーティストのほかに、舛次崇、松本国三、佐々木卓也、丸木スマ、大道あやなど、あわせて38人のアーティストたちによる、およそ200点あまりの作品が展示された。近年、いわゆるアウトサイダー系のアーティストを紹介する展覧会が盛んだったが、無名かつ驚異のアーティストを紹介する動きはひとまず落ち着きを見せ、昨今は彼らの作品とキャリアも知名度もあるアーティストによる作品を同じ舞台で見せようとする展覧会が相次いでいる。水戸芸術館現代美術センターの「LIFE」展(2006)しかり、広島市現代美術館の「一人快芸術」(2009-2010)展しかり。もちろん、それぞれの展覧会のねらいには微妙な温度差が見られるが、本展もまた、そうした動向の延長線上に位置づけられる。じっさい、本展の全体は、アーティスト本人の属性ではなく、色やかたち、物語性など、あくまでも作品の形態を基準にして構成されていた。ここには、障がいの有無やキャリアの大小を問わず、すべての作品を等しく見せようとする企画者の意図がうかがえる。たしかに展覧会を見ていくと、すべての作品にそれぞれ「独自のルール」が貫いていることに気づかされたが、そこに託された心理や記憶、欲望のかたちにはプロとアマ、障がいの有無などはほとんど関係がないことがわかる。ただし、俎上に乗せる機会は平等である必要があるかもしれないが、そこで発表された作品の評価は厳密に下さなければならない。展覧会の全体を見終わったとき、もっとも強烈に記憶に焼きついていたのは、圧倒的に草間彌生だった。発表された「愛はとこしえ」シリーズは、白い画面におびただしい黒の線と点が次々と連鎖しながら増殖していく様子を描いた絵画で、その異常な密度もさることながら、ある一定のルールにのっとりながらも、決して定型化にはいたらないバランス感覚が絶妙である。これは、多くの凡庸なアーティストにも、いわゆるアウトサイダのアーティストにも見られない、草間彌生ならではの特質である。

2010/08/10(火)(福住廉)

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